ブックマーク / honz.jp (502)

  • うつ病やアルツハイマー病もそれと関係しているのか 『脳のなかの天使と刺客──心の健康を支配する免疫細胞』 - HONZ

    それは脳のなかの「天使」でありながら、ときには「刺客」へと変貌するという。書の主人公は、非神経細胞のひとつである「ミクログリア」である。 つい最近まで、ミクログリアは脳のなかの端役にすぎないと考えられていた。脳内の情報伝達を担うニューロンや、そのつなぎ役を務めるシナプスといった綺羅星たちと比べると、それが果たす役割はごく些末なものだと考えられていたのである。ところが近年、そうした見方は大きく変わりつつある。ミクログリアは脳のなかできわめて重要な役割を果たすとともに、それが誤作動を起こすと、わたしたちの健康に甚大な被害が生じることがわかってきたのだ。後者の例を言えば、うつ病や不安障害、あるいはアルツハイマー病なども、ミクログリアの誤作動と関係しているという。 書は、ミクログリアが脚光を浴びるに至った経緯と現状を物語るものである。そしてそのストーリーは、ふたつの糸が撚り合わさった形で進行す

    うつ病やアルツハイマー病もそれと関係しているのか 『脳のなかの天使と刺客──心の健康を支配する免疫細胞』 - HONZ
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    agrisearch 2022/11/08
    「ミクログリアはわたしたちの脳と心に甚大な被害を及ぼすこともある。何らかのきっかけで暴走モードに切り替わると、それは健全なシナプスまで食べてしまい、特定の神経・精神疾患を招来させてしまう」
  • ジューディア・パール『因果推論の科学』を読む:統計を、AIを、そして科学について考える人は、ぜひ一読を! - HONZ

    ジューディア・パール『因果推論の科学』を読む:統計を、AIを、そして科学について考える人は、ぜひ一読を! 英語圏ではすでにして評価の高い、ジューディア・パールの大著『因果推論の科学--「なぜ?」の問いにどう答えるか』(原題はThe Book of Why)が、ついに翻訳刊行された。実は私は原書を読みかけて挫折していたのだが、このたび邦訳が出たのを機に、ついに読み通すことができた。そして、書を読み通したことで得たものは大きい。 ジューディア・パールは、人工知能への確率論的アプローチの導入と、ベイジアンネットワークの開発により世界的名声を確立し、「人工知能分野の巨人」とも呼ばれる人物である。ベイジアンネットワークなんて初めて聞くという人もいるかもしれない。人口知能研究の歴史という観点からざっくりその位置づけを説明すると、かつてAI研究は、「エキスパートシステム」と呼ばれるアプローチを採ってい

    ジューディア・パール『因果推論の科学』を読む:統計を、AIを、そして科学について考える人は、ぜひ一読を! - HONZ
  • 『情報セキュリティの敗北史 脆弱性はどこから来たのか』 訳者あとがき - HONZ

    作者: アンドリュー・スチュワート、翻訳:小林 啓倫 出版社: 白揚社 発売日: 2022/10/12 書は2021年9月に出版された、A Vulnerable System: The History of Information Security in the Computer Age(脆弱なシステム――コンピュータ時代の情報セキュリティ史)の邦訳である。著者のアンドリュー・J・スチュアートは投資銀行で情報セキュリティの専門家として働く一方、ロンドン大学キングス・カレッジに研究生として在籍中であり、情報セキュリティに関する論文を多数発表している。原著のタイトルにもある通り、書は「脆弱なシステム」であるコンピュータのセキュリティをめぐる歴史を振り返るとともに、それを通じて「なぜ情報セキュリティは失敗の連続なのか」を明らかにしている。 書でも繰り返し指摘されているように、いまや情報セキ

    『情報セキュリティの敗北史 脆弱性はどこから来たのか』 訳者あとがき - HONZ
  • 昆虫がいま、消えつつある──『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』 - HONZ

    この『サイレント・アース』は副題に入っているように、殺虫剤や農薬などの化学物質の危険性を訴えた「沈黙の春」の昆虫をテーマにした現代版とでもいうべき一冊だ。 著者によれば、いま世界から昆虫の数が急速に減少しつつあるという。温暖化など環境の変化もあるうえ、森林の伐採など問題は絶えないから、昆虫の数が減っていること自体に違和感はない。では、具体的に何が原因で昆虫は減っているのか? 気候変動の影響? 農薬や殺虫剤の影響がいまなお残っているのか? その全部が複合しているのか? そもそも、昆虫の数は数はあまりに多いので正確に把握されていないとよくいわれるが、数が減っているのは当なのか──など、昆虫の現在の苦境を中心軸において、無数の問いかけを書では扱っていくことになる。 昆虫がいなくなると何が問題なのか? 昆虫が消えてなにか問題があるのか? と思う人もいるかもしれない。蚊やゴキブリが消えたらせいせ

    昆虫がいま、消えつつある──『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』 - HONZ
  • 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』子供たちは言葉を取り戻せるか。国語力崩壊の実態を描く衝撃のルポ - HONZ

    書には信じがたい話がいくつも出てくる。以下にその一例をあげよう。 子供が母親にこんなことを言われた。 「ゲームばかりしているとお父さんに怒られるよ。まぁ、今日はいいか。勉強もしたしね」 どこの家庭でもありそうな場面だ。母親は決して叱っているわけではなく、勉強を頑張ったご褒美に今日は特別にゲームをしてもいいよ、と言っている。むしろ子供への優しさを感じる言葉だ。 ところがその直後、子供は激怒して母親に暴力を振るった。なぜか。原因は、子供が「勉強もしたしね」の語尾を「死ね」と聞き間違えたことだったという。 「え?」と混乱した人がほとんどかもしれない。なぜ「勉強もしたしね」を「死ね」と聞き間違えるのか。間違えようがないではないか。誰もがそう思うはずだ。 実は国語力のない子供というのは、言葉を文脈の中で理解できず、一語一語区切って読んだり、理解したりしているという。つまりこの子には、「勉強したしね

    『ルポ 誰が国語力を殺すのか』子供たちは言葉を取り戻せるか。国語力崩壊の実態を描く衝撃のルポ - HONZ
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    agrisearch 2022/08/17
    「なにも見えず、音も聞こえず、暗闇の中でただイライラしながら生きていたヘレンは、「言葉」を獲得することで、社会や他者と関係を結ぶことができた。」
  • 友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ

    ヒトの進化において「協力的なコミュニケーション」が大きな鍵を握ったであろうことは、たびたび指摘されるところである。人がひとりでできることは限られている。単独で野生動物を狩ろうとしても、得られるのはせいぜいウサギくらいだろう。しかし、ほかの人と協力すれば、わたしたちはシカだって野牛だって狩ることができる。また、ほかの人と情報交換すれば、わたしたちは新たな技術などについて伝えあうことができる。というように、その進化史において、協力的なコミュニケーションはヒトに多大なメリットをもたらしたと考えられる。 しかしそれならば、次のような問いがさらに生じても不思議ではないだろう。ヒトはどうやって協力的なコミュニケーションを行うことができるようになったのか。 書は、その問いに対してひとつの回答を与えようとするものである。そして、書が導き出す回答は、原書のタイトル(Survival of the Fri

    友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ
  • 『怪虫ざんまい 昆虫学者は今日も挙動不審』を読む - HONZ

    タイトルを見ただけで楽しくなっちゃうし(うんうん、そりゃあ昆虫学者は挙動不審にもなるよねw)、装丁に描かれた昆虫たちがまた、妙におかしい!(人間もかなりおかしいけどね!!) 著者のコマツ博士は、信州のとある大学(←と、文に書いてあるw)で博士号を取得後、いくつかの施設で昆虫研究者として働き、最後は某(上野の)国立科学博物館で研究員(無給)として働いたのち、現在はフリーランスの昆虫学者として、家事育児を担いながら記事や論文を執筆しつつ、昆虫と触れ合うために精力的にフィールドワークを続けているという、骨の髄まで「昆虫ラブ」な昆虫マニアでいらっしゃいます。 書に登場する昆虫たちは、繊細で美しく(←わたしの主観ですw)、ときにホラー(第一章に出てくるスズメバチネジレバネのメス。まじホラーだから、ここだけでも読んでみて!)。次々と登場する魅力的な虫たちの生態バナシだけでも引き込まれるし、コマツ博

    『怪虫ざんまい 昆虫学者は今日も挙動不審』を読む - HONZ
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    agrisearch 2022/08/17
    「裏山の奇人」小松貴氏の新著。「コマツ博士はこの本の中で、かなりの熱量とページ数を割いて「鹿」について論じてらっしゃいます。」
  • ジェレミー・デシルヴァ著『直立二足歩行の人類史』を読む:ゴキブリ二足走行の謎と教訓 - HONZ

    「人間を生き残らせた出来の悪い足」という副題と、次の瞬間にはネコ科大型獣の餌になるという惨劇を予想させる表紙カバーの絵に興味を引かれて、ふと手に取ったでした。序論と第一章では、二足歩行に対するわれわれの思い入れの強さが指摘されていて、ぐっと内容に引き込まれました。ところが54ページまで読み進めたところで、重大な問題にぶつかってしまったのです。そこにはこう書いてありました。 キリストトカゲにせよヴェロキラプトルにせよ、二足歩行の利点とは要はスピードだと思われる。ゴキブリでさえ、非常時には二足で立ち上がって全速力で走る。 「ちょっと待て!」とわたしは思いました。ゴキブリは短距離ならば飛びもするし、普通でさえ、かなりのスピードでササササと走りまわりますよね。そこからさらに速度を上げるために、よりによって二足で立ち上がって走ると!? いやいや、それはありえないでしょう。 第一に、ゴキブリの

    ジェレミー・デシルヴァ著『直立二足歩行の人類史』を読む:ゴキブリ二足走行の謎と教訓 - HONZ
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    agrisearch 2022/08/17
    「そして、衝撃的なゴキブリの歩様にさらりと言及したのでしょう」
  • 「意識=制御された幻覚」というアイデア 『なぜ私は私であるのか──神経科学が解き明かした意識の謎』 - HONZ

    科学にとって意識ほど難物なものはあるまい。赤いリンゴを見たときの、あの「赤い感じ」はどのようにして生じるのか。身体を所有し、自由意志によって行動をコントロールする、この「私」とは何なのか。意識のそうした主観的な性質は、客観的な記述を旨とする科学的説明を寄せつけないように思われる。 そのように、意識の科学の道のりはきわめて険しい。だが、この30年ほど、その科学はこれまでにない前進を遂げてきたし、ときにはハッとするような理論も提案してきた。神経科学者のアニル・セスもまた、そうした前進に寄与するとともに、非常にユニークな意識の理論を展開している。 先に手の内を明かしてしまおう。セスは意識を「制御された幻覚(controlled hallucination)」だと考えている。「赤い感じ」や「私」など、いまここに立ち現れているこれが「幻覚」だというのだから、そのアイデアはセンセーショナルだと言えるだ

    「意識=制御された幻覚」というアイデア 『なぜ私は私であるのか──神経科学が解き明かした意識の謎』 - HONZ
  • 『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか - HONZ

    「中世ヨーロッパ」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「疫病と飢饉」、「魔女狩り」、「異端審問」……。代表的なものを挙げたが、いずれにせよ、西ローマ帝国が滅んだ5世紀末からの約1000年間に明るく進歩的な印象を抱く人は少ないだろう。 だが著者は、そうしたネガティブなイメージはここ200年ほどの間に私たちに植え付けられた誤解だと説く。書には、中世に関する11の「フィクション」が登場する。多くの人は、どれも一度は耳にしたことがあるはずだ。 中世の人々は地球が平らだと思っていた。風呂にも入らず、暮らしは不潔で腐った肉も平気でべた。教会は科学を敵視し、今では誰も疑うことのない説も教会の権威によって迫害され続けた。何の罪もない女性たちが何万人も魔女として火あぶりにされた。 これらの説は、文化上構築された「中世」にすぎず、前世紀までに歴史学の専門家によって否定されている。だが、今でも大きな顔をして

    『中世ヨーロッパ ファクトとフィクション』「暗黒時代」という神話はなぜ生き残ってきたのか - HONZ
  • 『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション - HONZ

    何か不測の事態を前にすると、読みの習性でついに手が伸びてしまう。 中国・武漢で発生した原因不明の肺炎に世間が注目し始めた頃、読み直さねばと書棚からひっぱり出したのは、『パンデミックとたたかう』というだった。 このは、SF作家の瀬名秀明氏が東北大学医学系研究科教授(当時)の押谷仁氏と新型インフルエンザについて議論を交わしたものだ。2009年に出ただが、押谷氏の発言に教えられるところが多く、その名が強く印象に残っていた。 付箋を貼っていたところをいくつか抜き出してみる。 「感染症の危機管理の基は、わからないなかで決断をしなくてはいけないことです。その最終的な判断は、やはり政治家がすべきだと私は思います」 「ウイルス性肺炎は、現代の医療現場でも、治療するのが非常に厳しい肺炎です」 「重症者が多発した場合の治療の課題は、医療体制の問題として、日はICUのベッドや人工呼吸器が限られてい

    『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション - HONZ
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    agrisearch 2021/04/20
    「危機の際に現場は竹槍で戦うことを強いられるのか」「専門家が予想以上に目立ってしまったために、政治家が専門家を出し抜くようなイニシアチブを取ろうとする引き金になった可能性」
  • 世紀の奇書?『土葬の村』は貴重な民俗的資料である - HONZ

    埋葬には宗教による違いがある。イスラム経は土葬のみだし、キリスト教でも死者の復活という教えがあるので土葬が望まれる。国、地域別の火葬率は、米国52%、イギリス77%、ドイツ62%、フランス40%、イタリア24%、カナダ71%、ロシア10%、台湾97%、香港93%、韓国84%、タイ80%(2016年、2017年の資料)である。日では、いまやほとんどが火葬なので、我々から見ると意外なまでの高率だ。 明治時代には、火葬は仏教僧が推進するものであるという神道派の主張により、二年後に廃止されたとはいえ「火葬禁止令」が布告されたことすらある。しかし、2017年の統計では、99.97%が火葬で、残りの0.03%が土葬であるにすぎない。およそ4000人ほどなので、すごく少ないけれども、同時に、まだそれくらい残っているのかという気がする数字である。 『土葬の村』は、タイトルのとおり、土葬の習慣の残る村の記

    世紀の奇書?『土葬の村』は貴重な民俗的資料である - HONZ
  • 『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝 - HONZ

    その人にしか語り得ない境地というものがある。人生は十人十色だが、特殊な技能が必要で、なおかつ特異な環境に我が身を起き続けた人の軌跡はとりわけ面白い。 書は、若くして潜水の才能を発揮し、宮城の海から無数の遺体を引き上げてきた男・吉田浩文の激動の半生を綴る克明の記録である。 初めての遺体引き上げは1996年。死者は交番勤務の男性警察官で、車ごと海中に突っ込む入水自殺であった。 岸壁が関係者でごった返すなか海に潜り、遺体の青白い顔に鳥肌が立ったものの、車に手早くワイヤーをくくりつけ、的確にクレーン引き上げを指示した。祖父の代から潜水業を営み、高校は日で唯一の潜水土木を専門で教える岩手県種市高等学校に進学。29歳の若さとはいえ潜水士としては10年以上のキャリアを持つ吉田には容易い仕事だった。 機動隊や海上保安部のダイバー隊員をはるかに上回る高い技術を買われ、警察から次々と遺体引き上げ案件が舞い

    『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』宮城の海に潜り続けた男の濃密な半生を描く評伝 - HONZ
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    agrisearch 2021/03/15
    「著者が吉田氏と初めて会ったのは、震災直後の宮城県名取市でボランティア活動をしている最中のこと。貞山堀で引き上げをしていた彼は、この現実を伝えてほしいと著者に語った」
  • 『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪 - HONZ

    われわれ人類の平均寿命は延び続け、死亡率は低下し続けている。それは、先進国と発展途上国の別なく起きている。当然、喜ぶべき事象だ。 しかし、近年、米国の大卒未満の白人の間には、この世界的な潮流とは逆の傾向が見られる。労働階層の白人たちの平均余命は短くなり、死亡率が上がっているのだ。1990年代末頃から、とくに45〜55歳の低学歴中年白人の死亡率は年々高くなっているという。ちなみに4年制大学を卒業した高学歴の白人には同様の傾向はまったく確認されていない。 著者らの調べから、彼らの死亡率を大幅に上げている原因が、オピオイドなど医療用薬物の過剰摂取による中毒事故、アルコール性肝疾患、そして自殺であることが判明する。これらは自らが招いた死、それも人生に絶望した者が陥る死だ。著者らはこれを「絶望死」と呼ぶ。 いま、低学歴白人が経験しているのは、労働環境の崩壊、貧困、コミュニティーの破壊、宗教の衰退だ。

    『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪 - HONZ
  • 『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ

    テーマがテーマだけに、気分が落ち込んでいるときに読むべきではないだろう。しかし、気持ちが落ち着いているときに、自殺というテーマに関する知識を得ておくことは、いつの日かあなた自身やあなたの周りの大切な人を救うことになるかもしれない。そんなワクチンのような役割を果たす一冊である。 著者のジェシー・べリングは、前作『性倒錯者』と同様に、自分自身の実体験をカミングアウトすることから書を始める。自分のセクシュアリティに悩んでいたときのこと、学者として燃え尽き症候群になったときのこと。失業して家の近くの森で自殺の想念にとらわれたときのこと。 そんな主観的なプロローグから話は一気に客観の世界へ飛び、著者は「ヒトはなぜ自殺するのか」というシンプルな問いに、ヒトの心の進化という観点から挑んでいく。 1つ目のアプローチは、自殺を「種」の観点から見るもの。はたして自殺するのは人間だけなのか? もし自殺が人間

    『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ
  • 『危機の世界史』 - HONZ

    書は序文から思わずぎくりとするようなことが書かれている。いわく「いまの時代は安定しているように思えるが、現在の状況がひっくり返らないという保証はない……パンデミックは簡単に起こりうる」。さらに「核戦争も起こりうるし、環境災害が待ち構えているかもしれない」と続く。 これは歴史ではあるが、オーソドックスな歴史書ではない。著者が目を向けているのは、何らかの形の文明の終焉、終末である。とりあげられている時代は青銅器時代(紀元前1200年ごろに終焉)、古代アッシリア(紀元前612年に首都ニネヴェ陥落)、ローマ帝国(西ローマ帝国はゲルマン人の攻撃で486年に消滅)、そして1000年以上飛んで、二つの世界大戦を経て突入した核の時代。印象としては、歴史オタクが自分の好きな時代のことを好きなように語っているという感じなのだ。内容もかなりマニアックな部分がある。 それは著者ダン・カーリンが、歴史学者や歴

    『危機の世界史』 - HONZ
  • 科学の真髄ここにあり!?『ヘンな科学”イグノーベル賞” 研究40講』がおもろすぎるぞ。 - HONZ

    あと1年少しで定年を迎える。その後は、『こぐこぐ自転車』以来、勝手に師匠と仰いでいる英文学者・伊藤礼先生の『ダダダダ菜園記 明るい都市農業』を片手にちっさい畑での農業にいそしもうと思っている。あこがれの、晴耕雨読、ときどき物書き生活。 もうひとつ、秘かにイグ・ノーベル賞を狙った研究をおこなうつもりだ。もうネタは決まっている。どう測定するかがちょっと難しいのだけれど、かなり面白い仕事になるはずだ。そのお手になりそうなのが、この『ヘンな科学 “イグノーベル賞" 研究40講』である。 毎年のようにその受賞が報道されるので、イグ・ノーベル賞のことはご存じの方が多いだろう。1991年に創設された「人々を笑わせ考えさせた業績」に与えられる賞で、もちろん、その名が示すようにノーベル賞のパロディーだ。その中から、比較的最近の受賞対象を、それも、笑えるモノを選りすぐってあるだけあって、むちゃくちゃおもろい

    科学の真髄ここにあり!?『ヘンな科学”イグノーベル賞” 研究40講』がおもろすぎるぞ。 - HONZ
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    agrisearch 2021/03/04
    「トリカヘチャタテ」など。
  • 『羊の人類史』文化や貿易、軍事まで 羊は世界を変え続けた - HONZ

    羊といえば、なにを思い浮かべるだろうか。私の場合は、チェスターコートやメリノウールのセーターなど、ふだん愛用している衣類だ。浅はかながら、それ以外に思いつくことがなかった。書では、羊と人間との思いもよらぬ関係が語りつくされている。文化、貿易、軍事など多くの面で、羊は人類の歴史に影響を与えてきたのである。 例えば、撥水性のある羊毛はモンゴルの遊牧民の移動式住居、ゲルに用いられ、肉は料となった。世界帝国を築いたモンゴル人の機動力というと馬に目が向くが、羊もそれを支えていたのだ。 そもそも、羊と人類の関係はいつ、どこで始まったのだろうか。1000万年から2000万年前、最古の羊は氷に覆われた中央アジアで進化を遂げ、その後、世界中に移動していったという。現在、家畜として飼育されている羊は、このとき西方のヨーロッパへ移動したもので、「アジア・ムフロン」という種が元になっている。この羊は黒い上毛(

    『羊の人類史』文化や貿易、軍事まで 羊は世界を変え続けた - HONZ
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    agrisearch 2021/03/04
    「格子柄の毛織物、タータンはスコットランドの文化と強く結び付いているが、「クラン(氏族)ごとに異なるパターンが受け継がれている」という神話は、近代ナショナリズムが生み出した創作であるという」
  • 『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ

    にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車でを開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんなであろうと(たとえ『性豪』や『鍵開けマニュアル』といっただろうと)顔色ひとつ変えず公衆の面前でを開いてきた。それがハードボイルドな俺の流儀だった。 だが、書を手にした時、初めてその覚悟が揺らいだ。 いや、覚悟が揺らぐなんてちょっとカッコつけ過ぎである。正直に言おう。気後れしてしまったのだ。臆病な犬のように尻尾を股の間に挟んで後ずさりしてしまったのだ。カバンに手を突っ込んだまま固まっている俺を、目の前の女が不安そうに見上げた。銃を持っているとでも思われたのかもしれない。怯

    『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ
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    agrisearch 2021/03/04
    「青年誌に掲載された包茎記事の多くは、記事にみせかけた広告、つまり「タイアップ記事」だった…クリニック側にも巨額の広告費に見合うだけの利益がもたらされた」
  • 音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 - HONZ

    近田春夫を知っている人は、すでに読んだにちがいない。知らない人は、いますぐ読んでほしい。音楽で生きる、東京で生きる、その2つを味わえる。日のロック、パンク、ヒップホップ、さらにはJ-POPやCM音楽まで網羅した音楽史であり、東京でクールに生きてきた大人の足跡を体感できるだろう。 タイトル「調子悪くてあたりまえ」は、ビブラストーンの名曲からとられている。ご存知ない方は、動画サイトで確かめよう。そのあとで、曲名の意味、そして、ビブラストーンというバンドについて、ぜひ書を開いてもらいたい。 著者は、1951年2月25日、世田谷に生まれる。NHKに勤めたあとTBSに移る父親と、音楽教師の母親を持つ。IQ、知能指数169をたたきだした天才児だったので、慶應幼稚舎に入る。 「僕は春夫君とやっていく自信がないんです・・・」と担任教師が嘆くほどの多動症で、人を笑わせるのが好きだった。にぎやかな場所にい

    音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 - HONZ