戦後文学を牽引(けんいん)した大江健三郎さんが3日、亡くなった。親交のあった作家、池澤夏樹さんは自ら編集した「日本文学全集」のうちの一巻をまるごと大江作品にあてた。その魅力とは? 追悼文を寄せてもらった。 ◇ おおえ・けんざぶろう なんと美しい名前だろう。 やわらかい母音が三つ連なり、それをKという子音がしっかり受けて、更にごつごつしたZが乱して、「ろう」で丸く収まる。音節の数は軽く七五調を逸脱している。 こんな名前を持った男が詩人でないはずがない。 いわゆる詩集はない。しかし彼の小説のタイトルをみればそれがそのまま詩であることは歴然としている。 思い出すままに順不同で並べてみれば(このところぼくは羅列という古代的な文芸の手法を多用している)―― 燃えあがる緑の木 洪水はわが魂に及び 芽むしり仔(こ)撃ち 狩猟で暮したわれらの先祖 人生の親戚 われらの狂気を生き延びる道を教えよ 「雨の木(
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