東北の田舎で育ったので、知らない事、足りない物ばかりだった。 そんな環境だと、何かに出会った時の感動が大きい。 些細なことで豊かな気持ちになれた。 そんな記憶が、今でもくっきりと残っている。 心躍る前夜。 「明日、町さ連れで行くはんで早く寝ろ」 そう言われた日は、ドリフが終わったら大急ぎで歯磨きをして布団にもぐり早く寝た。 早く明日になって欲しかったからだ。 枕元に、綺麗にたたんだよそいきの服が置いてある。 コールテンの赤いワンピースに、白いタイツに、器用な母がかぎ針で編んだお気に入りのポシェットが置いてある。 当時は、コーデュロイじゃなくてコールテンと言っていた。 町に行く日は、朝から暗くなるまで歩きまわる体力勝負の1日になる。 寝不足で挑むなんて、とんでもなかった。 車を運転しない母なので、駅から一時間に一本あるくらいの汽車に乗って町に行く。 その駅までは、家から歩くと一時間くらいかか