私は戦争が終わって12年後に生まれた。本人としては子供のころ戦争なんて遠い昔のことだと思っていたが、今思い返すと、そして50歳まで生きて見ると、12年前なんてついこないだのことだと思うし、私ですらなんだかんだ敗戦の歴史感覚というのはちゃんとひきついた感じがする。まあ、時代ということだけだけど。 敗戦のとき、日本人にはいろいろな思いがあったけど、概ね、負けちゃったなということだと思う。あれだけがんばっても何にもなかったな。もうあれは全然だめだ、と。負けたら文句言うなよ、みたいな。 大本営みたいのを庶民はそれほど信じてなかったようだし、吉本隆明は信じていたみたいなことをいうけど彼はそのころ思春期というかお子ちゃまだったわけで、3つ年上の山本七平などは醒めていた(彼はちょっと醒めすぎだが)。でも、吉本ですら、庶民のなかにいたから、戦後の嘘はわかったものだったし、敗戦の感触というのはよく理解されて