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ブックマーク / jp.ign.com (119)

  • Netflix実写版『シティーハンター』レビュー 現代の冴羽獠像の創造は大成功、だが現代の「シティーハンター」としては物足りない

    闇を抱えた世界有数の大都市、新宿。煌めく街並みを真っ赤なミニクーパーで走り抜け、街の裏にうごめくさまざまなトラブルを、愛銃のコルトパイソンで華麗に解決する超一流の始末屋(スイーパー)がいる。1980年代後半から1990年代初頭にかけて一世を風靡した「シティーハンター」の主人公・冴羽獠は、その複雑で魅力的なキャラクターで、確固たるヒーロー像を作り上げた。 2019年にはフランスで『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』という実写映画が製作されたことを考えると、その影響の根強さと、当時「シティーハンター」を見ていたファンたちの憧憬の大きさがうかがえる。世界中の多くの人が、冴羽獠はかっこいい、冴羽獠みたいになりたい、と思ったのだ。 Netflixオリジナル映画である『シティーハンター』も、全体を通して、魅力的な冴羽獠をいかに現代の実写映画で表現できるかに多くの労力が割かれて

    Netflix実写版『シティーハンター』レビュー 現代の冴羽獠像の創造は大成功、だが現代の「シティーハンター」としては物足りない
  • 『装甲騎兵ボトムズ』高橋良輔監督が明かすガンダムとの差別化、描きたかった愛の物語、虫プロ時代の手塚治虫の超人ぶりも TAAF2024でトークショーが開催

    国内外からさまざまなジャンルのアニメーション作品が集まり、上映や展示が行われる「東京アニメアワードフェスティバル2024」が3月8日から11日まで、東京・池袋を拠点に開催。アニメの発展に功績があった人を顕彰する「アニメ功労部門」を贈られた『装甲騎兵ボトムズ』シリーズの高橋良輔監督も8日、OVA作品『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』の上映後に登壇して、作品の思い出やアニメ業界に入って最初に師事した手塚治虫のことを語った。 『装甲騎兵ボトムズ』といえば、富野由悠季監督の『機動戦士ガンダム』と並んで1970年代末から80年代中頃にかけて一大ブームを引き起こしたロボットアニメの中心的な作品だ。スタイリッシュなモビルスーツが宇宙を舞台に戦闘を繰り広げる「ガンダム」に対して「ボトムズ」は、寸胴で顔もない「スコープドッグ」というメカに無骨なキリコという男が搭乗して戦い続ける、硬派な雰囲気が

    『装甲騎兵ボトムズ』高橋良輔監督が明かすガンダムとの差別化、描きたかった愛の物語、虫プロ時代の手塚治虫の超人ぶりも TAAF2024でトークショーが開催
  • 宮崎英高が『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』とフロム・ソフトウェアの今後について語るロングインタビュー

    『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』について ――まず、「SHADOW OF THE ERDTREE」の舞台やストーリーについて教えてください。 今回のDLCの舞台となるのは、編に登場しなかった新しい場所です。影の黄金樹がそびえる「影の地」が今回の舞台になります。ワープする形で訪れる、完全に新しい場所です。 設定として、かつては編の舞台である「狭間の地」の一部だったのですが、なんらかの理由によってそこから物理的に切り離されました。 ストーリーの主軸となるものはふたつあります。まず、ミケラというキーアートにも登場しているキャラクターです。ミケラが「影の地」に向かって、プレイヤーがそれを追っていくというストーリーになっています。もう一方は「影の地」の歴史、女王マリカの過去の物語です。 ――「影の地」はどういったマップになるのでしょうか。編と同じくオープンワ

    宮崎英高が『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』とフロム・ソフトウェアの今後について語るロングインタビュー
  • なぜ日本のゲーマーはGOTYに輝いた『バルダーズ・ゲート3』を楽しめない可能性があるのか? そして、それを解決する3つの方法

    2023年のThe Game Awardsなどでゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いた『バルダーズ・ゲート3』。12月21日に日版も発売され、さっそく楽しんでいるという人もたくさんいるだろう。 一方、作を遊びはじめて戸惑っている人も少なくないようだ。かくいう筆者も最初はそうだった。激しいオープニング映像には盛り上がったし、いきなり触手の生えた脳みそが仲間になるのも笑った。しかし、いざゲームプレイがはじまってもあまり熱中できない。少し遊んでは「よくわからないな」とゲームを閉じてしまうのである。 その後も何度か挑戦を続け、結局、おもしろいと感じはじめるには10時間ほどかかった。しかし、なかには筆者と違って脱落してしまう人もいるようである。この記事ではその理由と対策を探ってみよう。 一口にRPGといっても考えるものが異なる「文化的背景の違い」 『バルダーズ・ゲート3』は、テーブルトークRPGである

    なぜ日本のゲーマーはGOTYに輝いた『バルダーズ・ゲート3』を楽しめない可能性があるのか? そして、それを解決する3つの方法
  • 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発者インタビュー:物語上で重要なあの設定やクラシックゼルダへの回帰などについて訊く

    『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、シリーズをリフレッシュするために必要だったと言われることが多い。しかし、いまだにオリジナルの根強いファンもいる。「風のタクト」と「時のオカリナ」にいい思い出があり、たとえリニアだったとしても、いろいろとややこしい体験をした日々に戻ることをいとわない人々だ。 これについてNINTENDO64で初めて3Dになったときから「ゼルダの伝説」シリーズにたずさわってきた青沼英二氏は「やっぱり人間の心理としては、今ないものを欲しがるという傾向があると思います」と語る。 特に青沼氏は、ゲーム、そして「ゼルダの伝説」シリーズのこれまでの進化についてどのように考えているか、自身の観点から語ってくれた。 「作でプレイヤーが自分で選んでいる道というのは、誰かに与えられた一道ではないかもしれないけど、自分で見つけ出す一道なわけですから、同じようなことだと思うんで

    『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発者インタビュー:物語上で重要なあの設定やクラシックゼルダへの回帰などについて訊く
  • 「ゴエモンのようでゴエモンでない少しゴエモンなゲーム」はなぜ注目されないのか?『豆狸のバケル』から見る半端なゲームの悲哀

    2023年11月30日に発売されたNintendo Switch向けソフト『御伽活劇 豆狸のバケル ~オラクル祭太郎の祭難!!~』(以下、『豆狸のバケル』)は、グッド・フィールが開発した3Dアクションゲームである。そう、元「がんばれゴエモン」のスタッフが立ち上げた会社が、まさしくかつてのゴエモンのような新作ゲームを作ったのである。 筆者にとってもグッド・フィールは今でも印象深いデベロッパーで、『ヨッシークラフトワールド』はかなり楽しんだ。もちろん、幼いころ「がんばれゴエモン」シリーズを遊んだこともある。特に好きなのは『がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス』だ。友人とサスケを奪い合ってミニゲームをやり込んだものである。 さまざまな層にリーチしそうなゲームであり、ゆえに『豆狸のバケル』もいくらか注目を集めるはず……と思っていたのだが、想像より反響が少ない。ほかの人気作と発売時期が被ったとい

    「ゴエモンのようでゴエモンでない少しゴエモンなゲーム」はなぜ注目されないのか?『豆狸のバケル』から見る半端なゲームの悲哀
  • 『スーパーマリオRPG』レビュー 優れたリメイクにひそむ「あのころにもどりたい」という後ろ向きな情動

    1996年に発売された『スーパーマリオRPG』がNintendo Switchでリメイクされ、私は発売日からむさぼるように遊んだ。楽しかった。しかし、クリアすると心に冷たい風が吹いたかのようであった。 スーパーファミコンの名作がリメイクされて、なぜ素直に喜べないのだろうか。リメイクとして間違いなく良質なのに、どうしてそんな気持ちになるのだろうか。幼いころに何度も遊んだRPGが蘇ってうれしいのは間違いないのに。 昨今はビデオゲームもリメイクやリマスターが多く、過去のさまざまな作品を遊びなおす機会が増えた。それは喜ばしいことなのだが――ノスタルジアはときに毒にもなりうる。 当時の雰囲気はそのままに、まさしく解像度が上がったリメイク 『スーパーマリオRPG』は、スーパーファミコンで発売された同名タイトルのリメイク作品である。グラフィックは3Dに一新されているが、ゲームシステムやふざけた雰囲気もし

    『スーパーマリオRPG』レビュー 優れたリメイクにひそむ「あのころにもどりたい」という後ろ向きな情動
  • 40年にわたってゲームの遊び方を変えてきた伝説のクリエイター! 鈴木裕ロングインタビュー

    鈴木氏といえば『スペースハリアー』、『アウトラン』、「バーチャファイター」シリーズや「シェンムー」シリーズなど、セガに在籍していた時代に数多くの名作を生み出した。1985年の「ハングオン」で史上初のバイク型筐体を生み出し、1993年の『バーチャファイター』で世界初の3D格闘ゲームを作り、さらに1999年の『シェンムー 一章 横須賀』でオープンワールドの先駆けと呼ばれるようになったゲーム体験で世界中のゲーマーを驚かせた。『サイファイ』が2006年に中止されていなければ、タッチ操作をアーケードに普及させた第一人者にもなっていたかもしれない。ひとりのクリエイターはいったいどのようにしてこれだけ異なる体験を生み出し、そのたびに「先見の明」を発揮してゲームの遊び方を変えることができたのだろうか。IGN JAPANは同氏のスタジオであるYSNETに赴き、詳しくインタビューした。 セガ時代の鈴木裕氏。

    40年にわたってゲームの遊び方を変えてきた伝説のクリエイター! 鈴木裕ロングインタビュー
  • 小島秀夫監督が「若者たちに観てほしい」日本映画の名作9選を発表

    小島秀夫監督は、映画への愛を公言してきた人物である。「METAL GEAR SOLID」や『DEATH STRANDING』などのクリエイターとして知られる彼は、ゲーム開発者になる前は映画制作を志しており、自身のゲームでもたびたびお気に入りの映画にオマージュを捧げてきた。「メタルギア」シリーズの主人公スネークも、『ニューヨーク1997』の主人公であるスネーク・プリスケンにちなんで命名された。小島が自身の作品に映画的な感性を込めてきたことは周知の事実で、著名な俳優を好んでゲームの声優に起用している。監督は、ただ映画が大好きなのだ。 映画ソフトの企画・制作で有名なクライテリオン社が、自社のYouTubeチャンネルで展開する「Closet Picks」シリーズに小島を招待した。この動画シリーズはクリエイティブ業界の著名人にスポットライトを当て、選ばれた人物が、クライテリオン・コレクションのディス

    小島秀夫監督が「若者たちに観てほしい」日本映画の名作9選を発表
  • 『すずめの戸締まり』から考える、作品と地方と聖地巡礼ビジネス

    新海誠監督作『すずめの戸締まり』のBlu-ray&DVDが2023年9月20日に発売。これにあわせ、同日より全国100館にて映画編を上映する「おかえり上映」が開催される。『ほしのこえ』や『秒速5センチメートル』など彼の持つフェティシズム含めて共感を持って観ていた僕にとって、『すずめの戸締まり』は「随分毒も薬も抜けてしまったなぁ」といった感想だった。『言の葉の庭』はある意味彼が色々と発散した作品としては頂点だったかもしれない。 そんな『すずめの戸締まり』は宮崎、熊、大分、愛媛、兵庫、岡山、東京、栃木、宮城、岩手と1都9県にわたる舞台が採用された。震災を止めるための「戸締まり」をするために半ば全国縦断をさせられた鈴芽の姿やロードムービーの作風になぞらえて、全国47都道府県の地元企業47社が参加したコラボ企画「日の戸締まりプロジェクト」というものまで行われた。 さて、新海誠の作品群なんかは

    『すずめの戸締まり』から考える、作品と地方と聖地巡礼ビジネス
  • 「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE」はなぜ議論を呼んだのか?野原一家が見せた平成の欺瞞と敗北

    記事には、『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』のネタバレが含まれる。 「クレヨンしんちゃん」の新作映画であり、劇場用作品としては初めて3DCGで制作された『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』について、さまざまな意見が飛び交っている。 実際に私も作を鑑賞して、もやもやしたものが後に残った。映画館を出て、エスカレーターを降りながら私はこのもやもやの理由を考える。この映画は『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』と同じ轍を踏んでいるのではないか、というところまで考え、映画館のエスカレーターを降りながらスマートフォンの電源を入れる。画面に現れたニュースを見て、私はハッとする。それは、2025年の大阪万博のパビリオン建設が難航しているというニュースだった。見出しを読んで、私はこのもやもやの最も

    「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE」はなぜ議論を呼んだのか?野原一家が見せた平成の欺瞞と敗北
  • 東京大学「ゲームの美学」講演レポート:ビデオゲームの外側「メタゲーミング」を知る

    2023年7月22日、東京大学ゲーム研究室(University of Tokyo Game Lab: UTGL)の第一回となるイベント「ゲームの美学」が東京大学の郷キャンパスで実施された。イベントは東京大学准教授の吉田寛氏、フランス出身アーティストのジェレミー・コルティアル氏、キュレーターの徳山由香氏の3人によって企画され、吉田氏による「メタゲーミング」の講演、およびジェレミー氏のアーティスト活動の紹介が行われた。どちらもビデオゲームのみならずプレイヤーに焦点を当てた内容であり、事前に予定していなかったにも関わらず講演後に許諾をいただいて記事化することができた。 こちらの記事では「メタゲーミング」について取り扱う。ジェレミー・コルティアル氏の講演に関する記事はこちら。 《ゲームを遊ぶ》から《ゲームで遊ぶ》へ――メタゲーミングの創造性 吉田氏の講演「メタゲーミングの創造性」はゲームをプ

    東京大学「ゲームの美学」講演レポート:ビデオゲームの外側「メタゲーミング」を知る
  • 『君たちはどう生きるか』あるいは「少年とサギ」レビュー 宮崎駿監督の創作の源流に触れることができる一作

    稿は映画『君たちはどう生きるか』のレビューです。物語の内容に触れる記述があるため、作品鑑賞後の閲覧をおすすめします。 “たとえば積み木の王国。積み木の王国という名称はすでになく、それらを作り上げていった幼いころの記憶は、あなたの中に、もうどこにもない。覚えていないし、わたしからこうやって聞いても、思い出せない。それはあなたの中の、想像が織りなす世界で、大切な外壁、支柱、外装などの一つとなって、他のことと複雑に折り重なり、編み込まれているから。それが、残像です。逆に言うと、あなたの想像の世界を支える大切なパーツになってしまったから、記憶は完全に消えたのです。形や姿を変えたのではなく、一部になったんです” 村上龍『MISSING 失われているもの』より。以下、稿の太字引用部分はすべて同作から。 映画が開幕しておよそ5分。たったそれだけの時間を観ただけで、これまで自分が書いてきた他のアニメ

    『君たちはどう生きるか』あるいは「少年とサギ」レビュー 宮崎駿監督の創作の源流に触れることができる一作
  • 映画『怪物』レビュー 是枝裕和×坂元裕二の才能は十全に発揮されたが、だからこそ大きな齟齬が生まれてもいる

    『怪物』は、『万引き家族』で知られる是枝裕和と、多数のドラマを手掛けた坂元裕二によるオリジナル映画である。音楽2023年3月に亡くなった坂龍一が担当しており、2曲を作のために書き下ろしている。 『万引き家族』でカンヌの最高賞であるパルム・ドールを受賞し、国際的にも認知度の高い是枝裕和は長年、坂元裕二との映画作りを熱望していた。坂元裕二は1990年代初頭からテレビドラマの第一線で活躍し続け、時代に即した詳細なディテールと、そのディテールによって作り出される異様なリアリティが多くのファンを生み、その時代時代のひとつの文化的な指標ともなった。ディテールとセリフの巧みさは、バブルの時代の気分を描いてムーブメントを巻き起こした『東京ラブストーリー』から、2021年に公開された『花束みたいな恋をした』まで明確に読み取ることができるだろう。 一方で是枝裕和もまた、『万引き家族』では貧困・格差の問題

    映画『怪物』レビュー 是枝裕和×坂元裕二の才能は十全に発揮されたが、だからこそ大きな齟齬が生まれてもいる
  • 大きな反発も生んだ香川県ゲーム条例の今、そして条例を追い続ける理由とは 書籍「ルポ ゲーム条例」の著者に訊く

    2020年、香川県議会で「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(通称「ゲーム条例」)が可決された。条例は、ネット・ゲーム依存症から子どもたちを守るため、ゲームは1日60分(学校等の休業日にあたっては90分)などの目安を示し、保護者がそれを遵守するよう努めなければならないといったいくつかの施策を示したものだ。条例の制定を受け、子どもの権利侵害の問題や行政による家庭教育への介入の問題、60分という数字の科学的根拠の希薄さなどについてSNSでは議論が巻き起こり、条例の存在は全国的に周知されることとなった。 また、条例制定に先だって募集されたパブリックコメントでは賛成の意見が8割以上を占めたとの発表があり、条例成立の根拠のひとつとされたものの、賛成とされる意見が書かれた複数のコメントに共通の誤字が見られるなど、内容には不審な点が多く見られた。 KSB瀬戸内海放送記者である山下洋平氏はこのパブ

    大きな反発も生んだ香川県ゲーム条例の今、そして条例を追い続ける理由とは 書籍「ルポ ゲーム条例」の著者に訊く
  • 押井守が表現を語り、片渕須直が研究の必要性を訴える 第1回新潟国際アニメーション映画祭が見せたものと残したこと

    新潟に国内外から長編アニメーションが集まる「新潟国際アニメーション映画祭」が3月17日から22日の日程で開催。華ともいえる長編コンペティション部門で受賞作を決めただけでなく、クリエイターや有識者が世界から集まってアニメーションの潮流を伝えるトークイベントや、学生に向けてトップクリエイターがアニメーションについて語るプログラムなども行って、見ることだけに留まらないアニメーションとの向き合い方を広めた。 「国際映画祭という場を借りて、アニメーションの魅力を改めて世界のみなさんに伝えられるのは、とても意味のあることだと思います」。審査委員長としてパンフレットに寄せた押井守の言葉どおり、新潟国際アニメーション映画祭は様々な部門を通してアニメーションの面白さや可能性を、新潟の地から発信するものとなった。 映画祭でメインに据えられる長編コンペティション部門の展開自体が、アニメーションのように自在に変化

    押井守が表現を語り、片渕須直が研究の必要性を訴える 第1回新潟国際アニメーション映画祭が見せたものと残したこと
  • 『シン・仮面ライダー』レビュー 庵野秀明監督が作り上げた、非人間性の王国

    主人公の郷猛をはじめ、登場人物の感情の流れがいまひとつわからない。人物の描写が足りず行動の動機が見えない。唐突に敵拠地に乗り込む。場面や心情の説明セリフが多い。どうしようもない欠陥が『シン・仮面ライダー』には数多く入っている。にもかかわらず、不思議なことに映画を観終えたいま「なにか、ある世界観の極北を観た」という実感がある。 映画館からの帰りの電車の中、欠陥がはっきりしているにもかかわらず、なぜ自分にそんな実感が残っているのか考えていた。 SNSあたりで「減点法なら低いが加点法なら100恒河沙点だ」みたいに特定のガジェットやアクションやキャラクターへの偏愛を評価する態度もあるが、それとも違う。そもそもアクションもそこまでのものではないし、特撮スーツのデザインも特に印象はない。偏愛すべき各要素が飛びぬけているわけでもない。 ここまでいいところを何も書いていないが、もう少しお付き合いいただ

    『シン・仮面ライダー』レビュー 庵野秀明監督が作り上げた、非人間性の王国
  • 「暴力表現と規制」で読み解くビデオゲーム史【前編】:暴力表現はいつ生まれ、どのように変化してきたか

    最近、「暴力表現とレーティング制度」を巡る議論が、再び活発になってきました。 これはホラーゲーム『The Calisto Protocol』が日語音声の収録まで済ませていたにもかかわらず直前に日発売中止となったり、リメイク版『Dead Space』がCEROレーティングを取得せずPC専売で発売したり、といった最近の出来事に端を発したものです。 ビデオゲームにおける暴力表現とレーティング制度、そして表現規制は、互いに密接に関連し合いながら発展・変化してきました。記事では、1990年代初頭、アメリカのレーティング制度であるESRBの成立の時期まで遡り、現在に至るまでの歴史を整理します。記事は前編・後編の2回にわけて掲載予定です。 暴力表現への懸念の高まりと米国ESRBの創設 ビデオゲームにおける暴力表現に対して、社会的な懸念が格的に唱えられるようになったのは、1990年代初頭、米国にお

    「暴力表現と規制」で読み解くビデオゲーム史【前編】:暴力表現はいつ生まれ、どのように変化してきたか
  • 「データ容量」で読み解くビデオゲーム史:40年間で530万倍にも増加したデータ容量、その時代ごとの特徴を整理する

    ビデオゲームが必要とするデータ容量は、年を追うごとに増加しています。『Call of Duty』シリーズといったAAAタイトルともなると、100GBを超えるものも珍しくありません。ゲーミングPCや現世代機は、大容量(PS5・Xbox Sereis Xの場合で1TB)のストレージを備えていますが、ある程度まとまった数のゲームをインストールしようとすると、すぐに一杯になってしまいます。 今回は、「データ容量」に注目して、ビデオゲーム歴史を整理します。データ容量がどのように増大してきたか、そして時代ごとにどういった特徴があるかを示します。 この記事では、1980年代初頭から現代(2023年)までを、「ROMカセット期」「光学ディスクメディア期」「ダウンロード販売期」の3つに区分します。ただし、3つの時代ははっきりと区分できるものではなく、以下の図で示す通り、互いにオーバーラップがあります。

    「データ容量」で読み解くビデオゲーム史:40年間で530万倍にも増加したデータ容量、その時代ごとの特徴を整理する
  • 『ボージャック・ホースマン』は物語みたいにいかない人生を生きる難しさを描く物語だった

    いつだって、物語が必要だ。映画もドラマもゲーム小説も。物語は私達が生きていくうえで、前に進む上でぜったいに必要な伴走者であり、ときに自分の人生をより深く理解するためのガイドにもなってくれる。だから私達は物語を求める。でもときに、物語はときに私達を苦しめ、現実の人生に欺瞞の粉を振りかける。 Netflixを代表するオリジナルアニメであり、2020年にシーズン6で完結した『ボージャック・ホースマン』もまた、多くの視聴者に寄り添ってくれる、極めて優れた物語だった。同時に、巧みなストーリーテリングと演出によって一頭の馬の物語に普遍性を与えたクリエイターのラファエル・ボブ=ワクスバーグは、物語が私達にもたらす苦いもの、すら露わにした。不思議なことに、その苦さがあったからこそ、『ボージャック・ホースマン』のラストシーンはとびきり美しく、多くの視聴者に言葉にできない感動を残した。 物語のネガティブな部

    『ボージャック・ホースマン』は物語みたいにいかない人生を生きる難しさを描く物語だった
    akihiko810
    akihiko810 2022/12/25
    「ニュー・ダッド ――あたらしい時代のあたらしいおっさん」より