「この短時間でわたしのどこに惹かれたのか教えてくれないか」 成瀬さんが俺の目を見て尋ねる。 「だれにも似てないところかな」 考える前に口から出ていた。少なくとも、これまで俺が出会ってきた女子の中に成瀬さんのような人はいなかった。成瀬さんは「なるほど」とうなずく。 (宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』新潮社、2023) こんにちは。この「だれにも似てないところかな」というのは言い得て妙で、読みながら「なるほど」と頷いてしまいました。少なくとも、これまで私が出会ってきた女性の中に成瀬さん(以下、敬称略)のような人はいません。「だれにも似てない」女性だったら、奇跡的に一人いますが。それはさておき、この「だれにも似てない」というエピソードをまくらに、クラスの子どもたちに成瀬のことを、小学校の卒業文集に「200歳まで生きる」と書いた成瀬のことを、《大きなことを百個言って、ひとつでも叶えたら、「あの人