2023年9月付の内閣府「外交に関する世論調査」では、中国に「親しみを感じない」と回答した日本人が86.7%に達し、調査開始から最悪の数字に達した。ところが、今年の夏休み映画の目玉『キングダム 大将軍の帰還』は、興行成績75億円、約513万人を動員する大ヒットを記録した。世論調査の結果は「中国ぎらい」なのに、日本人俳優が古代中国人を演じる映画を好んで見ているのが、われわれ日本人だ。 この矛盾の理由は、多くの日本人が『キングダム』や『三国志』に登場する歴史上の中国と、航空機の領空侵犯や沖縄への取り込み工作を繰り返している現代の習近平政権の中国を、完全に“別物”だと考えているためだ。しかし、この考えは日本人が勝手に思い込んでいるもので、中国人自身は歴史の延長線上で政治やビジネスをおこなっている。 ジャーナリストの安田峰俊氏の新著『中国ぎらいのための中国史』(PHP新書)は、現代中国における「中