ぼくは建築の設計を本業のかたわら、自ら設計した《仏生山温泉》(2005)という公衆浴場も運営しています。公衆浴場はまさに代表的なパブリック・スペースだと言えます。実際に公衆浴場を運営していると、パブリックな状況を垣間見ることができます。 「裸の付き合い」という言葉をよく耳にします。仏生山温泉でも、毎日湯船で顔を合わせるお客さん同士が仲良くなり、みんなで一緒に旅行に出かけたりしています。裸になるとコミュニケーションの質が変わってきます。三度の飲み会より、一度の入浴。そう言ってもよいくらい、人と人の関係に変化が生じる。だから、「裸の付き合い」という親密な関係は、まさに文字通り本当のことなのです。これは「裸だから」という理由だけではありません。裸であること、かつ同じ体験を共有していることも重要な要素です。「同じ釜の飯を食う」というおなじみの言葉と同様に、同じ風呂に入っているという共通の体験が親密