夫が単身赴任で、しかも子育て中の女性に、長距離通勤か退職かの非情の選択を迫っている企業があります。5400人の人員削減、6000人の広域配転をすすめる半導体大手のルネサスエレクトロニクスです。 (堤由紀子) 10月半ば、東京都小平市の住宅街の朝。7時10分すぎ。小さなごみ袋をいくつもさげた田中美保子さん(53)=仮名=が、マンションの階段を下りてきました。 東京から群馬へ 10月初旬からルネサス高崎事業所への通勤が始まりました。これまで通っていた武蔵事業所(小平市)は、歩いて15分でした。 自宅からまず30分、最寄り駅まで歩きます。当初はバスに乗り、乗り継ぎがうまくいかない帰り道だけ歩きました。3日目、足が腫れて痛くなりました。それでも今は、行き帰りともできるだけ歩きます。バス代が支給されないからです。「この先どうなるかわからないから、できるだけ節約したい」 ルネサスの高崎事業所へは在来線