ヨン・サンホは映画を通して社会を描く監督だ。もとより映画には、フィルムを通して現実を写し取り、隠れている問題意識、そしてそこに生きる人々の感情をスクリーンを通して訴えかける力がある。特に韓国映画においては、メディアの弊害や無能な政府の姿をとらえた「トンネル 闇に鎖された男」、現在話題沸騰上映中の「タクシー運転手 約束は海を超えて」(※)などを引き合いに出すまでもなく、その色が濃い。 ※20万人が参加した大規模デモ、その武力弾圧により多数の死傷者を出したにも関わらず、戒厳令に伴う報道規制により市民にはその存在が隠されていた「光州事件」を題材としている ヨン・サンホ作品には、社会の残酷さを少年たちの閉鎖的コミュニティーを通して書いた「豚の王」、弱者がいかに虐げられてきたかを現した「ソウル・ステーション/パンデミック」、そして襲いくる“北”に対する恐怖を切り取った「新感染 ファイナル・エクスプレ