戦火のウクライナに寄付 2017年のクリスマス、ユーリ・デイチャキフスキ(61)はニューヨークに住むウクライナ系移民に3000ドル(約33万4000円)を送金した。「我らのバッタ」という暗号名のドローンの購入代金として。 自身もウクライナ系移民の子孫で、米オハイオ州クリーブランド出身のユーリは、ジョンズ・ホプキンズ医師コミュニティに属する心臓専門医だ。彼は送金の内訳については明かさなかったが、このドローンはいずれロシアの支援する分離主義勢力と戦闘状態にあるウクライナ義勇大隊が使用することになる。 ユーリのスマホ画面には東ウクライナの塹壕に爆弾が落下し、あわてて退避する敵陣の姿が映し出されていた。
科学者が証言 2016年11月からキューバのアメリカ大使館で、外交官が体調不良を訴えた事件が起きた。その原因をキューバ政府、もしくは第三者による音響攻撃とみていたアメリカ政府。 以前に米「ニューヨーク・タイムズ」紙は、マイクロ波が健康被害をおよぼす「フレイ効果(マイクロ波聴覚効果)」の可能性も指摘していたが、原因は特定されていなかった。 だが最近になって、また新たな原因が浮上したと、同紙が報じた。 その正体は、まったく“ミステリアス”ではない──コオロギの鳴き声だというのだ。 これを発表したのは、カリフォルニア大学のアレクサンダー・スタッブスと、イギリスのリンカン大学のフェルナンド・モンテアレグレ-Z。
本日(3月8日)、地上波で初放送となる映画『カメラを止めるな!』。低予算で作られたインディーズ作品で、最初に上映されたのはミニシアター2館だけだったが、口コミで広まり大ヒットにつながった──という話を聞いたことのある日本人は少なくないだろう。 では、この作品が海外でも高い評価を得ていることは知っていただろうか。インドの日刊紙は「これほどまでに自然と人々を楽しい気分にさせる作品はない」と賛辞を送っている。 不確かな映画製作ビジネスにおいて唯一確かなこと、それは、作品の運命は決して予測できないということだ。はたして大当たりするのか? それとも無名に甘んじるしかなくなるのか? しかし、上田慎一郎監督による日本のゾンビコメディ映画『カメラを止めるな!』が収めた前代未聞の成功は、2018年における最も想定外な現象の一つとなった。 この低予算作品はどこからともなく現れると、巨額の興行収入をたたき出し、
2019年のダボス会議が終わってから、さらに注目を集めている参加者がいる。オランダ人の歴史学者ルトガー・ブレグマンだ。日本でもTEDトークや著書『隷属なき道』などを通してベーシックインカム論者として知られている。 彼がパネリストとして参加したディスカッション「不平等の代償」のダイジェスト動画(NOW THIS NEWS)は現在、800万回近く再生されている。 なぜそんなに注目されているのか。全訳でお届けする──。 税金逃れを逃すな ルトガー・ブレグマン(歴史学者):ダボスには初参加です。しかしこれはどうしたもんかなっていうのが正直なところです。 だって、1500機ものプライベートジェットがここに飛んできて、われわれがいかにこの惑星をぶち壊しているかというデービッド・アッテンボロー卿の話を聴きにきてるわけです。 で、みんなが「参加」とか「正義」とか「平等」とか「透明性」って言葉でしゃべってる
中国の顔認証技術が「そこまでやるか!?」と突っ込まざるを得ないほどの飽くなき進化を続けている。 世界最先端技術を実装し、超・監視社会システムの構築に注力する中国では最近、17年前に指名手配された殺人事件の容疑者まで割り出すことにも成功した。外国人のわれわれも、中国の入国審査を終えたその瞬間から24時間体制の監視を逃れることはできない。 中国中央電視台(CCTV)によると上海市青浦区で1月6日午後、高速道路の出入口前に設けられている貨物・旅客チェックポイント「検査站」にひとりの女が立ち寄った。トイレの場所を尋ねようと女が事務所のドアを開けたその刹那、一帯にけたたましく警報が鳴り響いた。 女は駆け付けた民警たちに取り押さえられ、身分証の提示を求めるが、女は「家に置き忘れた」と言ってウソの身分証番号を告げ、何とかその場をやり過ごそうとした。だがそんな小芝居が通用するわけもなく、警察のデータ解析に
日本では国民の関心事となっているカルロス・ゴーン逮捕事件。しかし今、フランスを揺るがしているのは別の問題である。 ちょうどゴーン逮捕の数日前、フランス全土で大規模なデモが始まった。参加者が蛍光色の黄色い安全ベストを着用していることから「黄色いベスト運動」と呼ばれている。欧州で原油価格の高騰が続くなか、フランス政府が燃料税の引き上げを進めようとしたことに抗議するものだ。 SNSでつながった30万人弱が、全国の交差点(ロータリー)や高速道路を封鎖するという新しい形態のデモだったが、翌週にはシャンゼリゼ通りでのデモが暴徒化。治安部隊と激しく衝突し、破壊行動を起こすなど、まったく別の意味でも大きな事件となった。
テスラ社CEO、イーロン・マスク(47) Photo: Sasha Maslov / The New York Times 「この数ヵ月は、私にとって最も耐え難い地獄のような日々でした」 ──2016年3月、米「テスラ」社が新型EV「モデル3」を発表すると、その価格帯の手頃さと性能の高さから40万台以上の予約注文が殺到。そこから、同社CEOイーロン・マスクの「モデル3大量生産」達成に向けた長い闘いの日々が始まった。 だが、生産体制はいっこうに軌道に乗らず、メディアには「経営危機」と叩かれ続ける。そのとき、社内ではいったい何が起きていたのか? 米誌「ブルームバーグ」がマスク本人と社員への取材をもとに問題の全貌を明らかにした傑作ルポを、全3回でお届けする。
マンガを権利者に無断でアップロードし、タダで読めるようにする。 いま日本でも話題になっているが、この問題は英語圏を舞台に15年以上も議論されてきた。 研究者であり翻訳者でもある椎名ゆかり氏が一連の経緯をあらためてまとめ、「違法にマンガをアップロードする側」の言い分も検証する。 あの「無料漫画サイト」のような問題は20年前からあった 現在、マンガのデータを権利者の許可なくオンライン上に掲載し膨大なアクセス数を稼ぐサイトが話題になっています。 マンガ家の権利を侵害し、マンガ業界全体に多大な損失をもたらしていると思われる違法アップロードサイト。 いま話題にあがっているのは日本語のデータがそのまま権利者の関与のないところで閲覧されているサイトのことですが、世界中には日本のマンガにさまざまな言語の翻訳を付けて公開している同様のサイトが多数あり、以前からその存在は問題視されてきました。 今回このコラム
最近、あのビル・ゲイツが炎上騒動に巻き込まれた。米掲示板サイト「レディット」の“ask me anythiing”というセッションに登場した彼が、仮想通貨の危険性についてこう述べたからである。 「仮想通貨の最も大きな特徴は匿名性であり、これが良いことだとは思わない。仮想通貨を用いた資金洗浄や脱税、テロリストへの送金がなされてきた。政府はこれを規制しようとしているが、いまや仮想通貨は薬物購入にまで使われるようになっている。つまり、仮想通貨は公平かつ直接的なやり方で死を引き起こす稀な通貨である。 イニシャル・コイン・オファリング(ICO、新規仮想通貨の公開)のような資金調達の周辺では投機の波が来ており、強気に出ようとする人々にとって、仮想通貨は非常にリスクが高い」 こうした発言が「彼は何もわかっていない」「ビル・ゲイツ自身もブロックチェーン技術に投資しているではないか」などといった批判を集めた
私たちはなぜ睡眠不足になったのか 1942年、睡眠時間が1日6時間以下の人の割合は8%にも満たなかった。ところが2017年には、その割合がほぼ2人に1人になっている。この75年間のあいだにいったい何が起こったというのか? その理由は明らかだろう。マシュー・ウォーカーは言う。 「まず、電気のせいで夜も明るくなったことが挙げられます。光は睡眠を大幅に減らす要因です。次に、働き方の問題。仕事の始まりと終わりの境目が曖昧になってきており、通勤時間も長くなった。家族との時間や余暇の時間を削りたい人はいませんから、代わりに睡眠時間を削るわけです」 さらに、精神的な不安も関係する。 「現代人は孤独で落ち込みやすい。アルコールやカフェインもすぐに手に入る。これらはすべて睡眠の敵です」 先進国では、睡眠が、精神的な弱さや恥の意識と強く結びついていることも原因の一つだという。 「私たちは睡眠に“怠惰”というレ
日本経済の根幹を占めてきた家族経営の中小企業。だが、団塊世代の経営者がリタイヤを考えはじめた現在、こうした企業はなだれをうって倒産していく可能性がある。その数、年間4万社──。展望はないのか、英経済紙が取材を重ねた。 2016年後半、当時株式会社まるきの社長であった石渡英明は80年間続けたスーパーマーケットを閉める決意をした。祖父が設立し、3代にわたって受け継いできた店であるが、石渡の息子はあとを継ぐことにまったく関心を持たず、他の後継者もいないうえ、客数も減少しつつあったのだ。 しかし、日本では珍しいとされているが、こうした問題にも解決策がある。M&Aだ。中小企業を対象とした仲介会社に頼り、新たな展望をもとに事業を売却する。閉鎖が確実視されていたスーパーマーケットまるきにも、売却先が見つかった。おかげで現在も、屋号は変わったが営業を続けることができている。 このような取引は、見通しの立た
人間行動の分析結果は「ハエの絵」に結実した──? 私たちの意思決定は「ナッジ」を駆使することですでに先回りされている。 2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が生み出した「ナッジ」を詳細に解説する。 1999年のことだ。アムステルダムのスキポール空港は経費削減のため、男子トイレに目を付けた。床の清掃費が高くついていたからだ。 そこで、小便器の内側に一匹のハエの絵が描かれた。その結果、なんと清掃費は8割も減少した。 こうして、アムステルダムの小便器のハエは「ナッジ」の最も有名な成功例となった。 ナッジ(nudge)とは、「ヒジで軽く突く」という意味。科学的分析に基づいて人間の行動を変える戦略のことだ。スキポール空港の場合、「人は的があると、そこに狙いを定める」という分析に基づいて、小便器を正確に利用させたわけだ。 そしてハエは世界中に拡散した。現在、各国政府はナッジを
これから数十年で、機械学習やロボット工学のレベルが向上すると、何億人もの仕事が失われるだろう。そうなると、世界全体で経済圏や貿易のネットワークが破壊されるはずだ。 産業革命は都市で暮らす労働者階級を生み出し、20世紀の社会史および政治史は、彼らが抱える問題を中心に展開した。同じように、人工知能(AI)革命は「非労働階級」を生む可能性がある。そして、彼らの期待や不安が21世紀の歴史を形作るのかもしれない。 こうした時代の流れに対応するには、前世紀から引き継いだ社会モデルや経済モデルでは不充分だ。たとえば、社会主義によると、経済にとって労働者階級は不可欠な存在だという。 よって社会主義者たちは、労働者階級が持つ大きな経済的価値を政治的な力に変える方法について説いた。だが、大衆が経済的価値を失うなか、こうした教えは今後数十年でまったく無意味になるかもしれない。 いやいや、ブレグジット(英国のEU
『スタートアップ・バブル』の舞台となったハブスポットにて。スタンディングデスクで働く従業員 PHOTO: PAT GREENHOUSE / THE BOSTON GLOBE / GETTY IMAGES この本を書いたのは、「ユニコーン」企業の内幕を見る、より現実的な視点を提供し、世間が信じているヒーローさながらの起業家の物語に一石を投じたいからだ……。 「ニューズウィーク」をリストラされた51歳の毒舌おじさん記者が転職したのは、注目のIT企業「ハブスポット」。彼がそこで見たのは、若者の「やりがい搾取」の実態だった! キラキラなスタートアップ企業の、ぐっちゃぐちゃの内側とは? 「ハーバード大学以上の難関企業」 「ここにいるってことは、君たちは全員、きわめて特別な存在なんだ」と、研修トレーナーが新入社員に向かって言う。 「ハブスポットには数え切れないほどの応募者がやってくる。この部屋に座って
2017年6月9日、アップルのティム・クックCEOがMITの卒業式に登壇し、学生たちに向けてスピーチをおこなった。その全訳をいち早くお届けしよう。 MITの皆さん、こんにちは! そして、2017年卒業の皆さん、おめでとうございます。 MITとアップルには、多くの共通点があります。どちらも難問に取り組むこと、そして新しいアイディアを模索することが好きなところです。特に、世界を変えられるような、とてつもなく大きなアイディアを発見するのが大好きです。 「ハック」と呼ばれるイタズラは、MITが誇る伝統のひとつですね。これまでに、数々の見事なイタズラに成功してきました。学生たちがどんな手を使ったのか全然わからないのですが、構内に火星探査機を放ったり、ドームにプロペラ付きの帽子をかぶせたり、大統領のツイッターを乗っ取ったり(笑)。あれが大学生の仕業だとわかるのは、大半のツイートが午前3時頃に投稿される
加速化する日本の少子高齢化。年金は当てにならず、70歳を過ぎても深夜労働を余儀なくされる。生活難から自ら命を絶ち孤独死する道を選ぶ人もいれば、わざと軽犯罪を犯して刑務所に入ろうとする人も──。日本の高齢化社会に未来はあるのか、スペインから記者が取材を重ねた。 リタイアできるのは恵まれた少数派 健康状態は決して良くないにもかかわらず、サトウレイコはつかつかと北海道夕張市の閑散とした道路を横切って出勤する。冬の冷気が骨にまで染みる。 彼女に選択肢はない。サトウの夫はすでに亡くなっており、月730ユーロ(約8万5000円)ほどのわずかな収入で生活をやりくりしている。たとえ80歳を目前に控えていても、生き延びるためには仕事を続ける必要がある。 夕張市は人口9000人ほどの小さな都市だ。かつては「石炭の首都」として栄えていた。ところが、いまでは日本国内で「最も年寄りの多い街」へと変貌した。2人に1人
新刊『頭で考える前に「やってみた」人が、うまくいく』を上梓したサチン・チョードリーのロング・インタビューにジム・ロジャーズが応じた。 2日連続更新の後編では、日本のゆくえについても注目すべき発言が続く。そしてインタビュー後にクーリエ・ジャポンも直撃し、「ウェブメディアに投資してみませんか?」と聞いてみた──。 「破綻が迫っているのは一目瞭然です」 ──移民について、ロジャーズさんはとても前向きですね。たしかに、これまでの米国では、シンガポールのように多民族が共存することで、法制度も文化も、経済も豊かなものとなりました。 しかし、ここ日本はいまだに移民制度に対してとても厳しく、外国人の流入に対してオープンではありません。日本の移民制度についてはどうお考えですか? 私は日本人ではないので、日本人に何かをしろと指示できる立場にありません。 もちろん、日本は基本的に外国人や移民が好きではない、と言
米国ではいかにして効率良く働いて、家族と過ごしたり、趣味の時間を作ったりするかということが話題になるが、日本には、そのような考えかたは浸透していないという。米「ワシントン・ポスト」紙の記者が、日本の抱える「過労死問題」を調査した。 週90時間労働の果てに 日本には「ワークライフ・バランス」という用語は存在しない。 かわりに、「働き過ぎによる死」を意味する「過労死」という言葉がある。この過労死は、これまでほとんど議論されることがなかった、日本の劣悪な労働文化がもたらした結果といえる。 実際にここ日本では、毎年、何百人、いや、おそらく何千人もの労働者が文字通り、過労死しているのだ。セリザワキヨタカもその1人だ。 2015年7月に当時34歳だった彼は、人生最後の数週間を週あたり90時間働いた後、自殺した。 「息子の同僚は、その異常な労働時間に驚いていたと言っていました」 自宅で本紙の取材を受けて
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