「日本のモバイルネットワークが、世界に出遅れるのを見るのは初めてだ。日本は5G(第5世代移動通信システム)の展開を加速する必要がある」――。こう警鐘を鳴らすのは、スウェーデンの通信機器大手Ericsson(エリクソン)の日本法人エリクソン・ジャパン社長を務めるLuca Orsini(ルカ・オルシニ)氏だ。
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2022年6月27日、東京・立川市役所で大規模な通信障害が発生した。出先機関を含めた1000台以上のパソコンで終日、窓口作業ができなくなった。庁内LANの心臓部となるコアスイッチの障害が原因だった。コアスイッチに向けて大量の通信が発生し、メモリー不足に陥った。原因特定に時間がかかり、完全復旧に1週間を要した。 グループウエアの挙動がどうもおかしい――。東京都立川市役所の本庁舎内がざわつき始めたのは2022年6月27日、始業時刻である午前8時半ごろのことだ。ほどなく市役所のITインフラストラクチャー運営を担う総合政策部情報推進課のもとに、「窓口業務用の情報システムにアクセスしづらい」「内線電話が通じなくなった」といった職員らの困惑した声が続々と寄せられるようになった。 情報推進課はただちに障害箇所の特定に乗り出した。庁内ネットワークのメンテナンスを委託している保守事業者と連絡を取り合い、担当
NTTドコモが総務省の有識者会議でトラフィックポンピング問題への対処を要望している。聞き慣れない言葉だが、トラフィックポンピングとは音声通話のかけ放題を悪用して接続料を不正に搾取する行為を指す。過去にも事件として報じられたことがあるので筆者も認識はしていたが、「2014年にかけ放題のサービスを提供開始してから年々増えている。看過できない深刻な状況だ」(NTTドコモ経営企画部料金企画室長の大橋一登氏)という。 10倍や100倍に膨れ上がるトラフィック 音声通話は通信事業者がネットワーク設備を相互接続することで実現しており、着信側事業者は発信側事業者から接続料を徴収、発信側事業者はユーザーに通話料を請求する仕組みとなっている。 トラフィックポンピングはこの仕組みを悪用する。悪意のある事業者はドコモのかけ放題を悪用し、自社宛てに電話をかけまくるだけだ。2021年に明るみに出た事件では、大量のSI
2022年7月以降、KDDIやNTT西日本、楽天モバイルなどで数百万人以上の利用者が長時間にわたって通信を使えなくなる大規模障害が相次いでいる。筆者は総務省の有識者会議に参加し、大規模障害の原因を分析・検証する作業を進めている。その中で、業界全体に横たわる共通の課題が見えてきた。すなわち(1)通信設備が抱える潜在的なリスク洗い出しの不足(2)社内情報共有体制の不備(3)利用者への説明責任の不足――だ。通信障害の影響を最小限に抑え、利用者にとって信頼できるネットワークにしていくために業界全体として何が必要か。 浮かび上がる業界共通の構造的な問題 2022年は大規模な通信障害が頻発した年だった。延べ約3000万人が約61時間にわたって通信を利用しづらくなったKDDIの2022年7月の大規模通信障害のほか、最大211万回線、約5時間にわたってインターネットサービスが利用しづらくなったNTT西日本
楽天グループがオンプレミス(自社所有)環境のプライベートクラウド「One Cloud」を拡充し、グループ企業の各種事業が用いるIT基盤の統合を進めることが日経クロステックの取材で分かった。現在、パブリッククラウドで稼働させているシステムが多数あるが、原則としてOne Cloudへシフトしていく。グループ全社でIT基盤のプライベートクラウドへの集約を進めてコスト効率を高めるほか、IT基盤のノウハウを蓄積し安定稼働やセキュリティー強化につなげる。 プライベートクラウドは、新たに参入を計画する法人向けITサービスの基盤にも活用する。計画するのは本人確認に使うeKYCやWebサイトのアクセス分析、電子決済の機能などだ。いずれもグループの事業で使うために開発した技術で、従量制のパブリッククラウドサービスとして外販する方向で準備を進めている。 部分的だったOne Cloudの利用、まず楽天市場で全面採
2022年9月9日、「スプラトゥーン3」が発売されました。とても楽しみにしていたのですぐに買いました。発売から1月半ほどたってこの文章を書いていますが、いろいろなステージで様々なブキを使ってインクを塗り合い楽しくプレーしています。ちなみに今のウデマエはS+30になったところです。 この特集は、人気のスプラトゥーン3を通して、最新の通信技術の基本を学んでしまおうというものです。前半の今回はスプラトゥーン3を含むオンラインゲームの通信技術を解説します。後半となる次回は、実際にスプラトゥーン3のパケットをキャプチャーして、それらの通信技術が実際にどのように使われるのかを見ていきます。 なお記載内容については、筆者や編集部独自の考察や推測によるものであり、任天堂の公式見解ではないことを明記しておきます。 オンラインゲームを実現する通信技術、UDPとは 一般的なコンピューターが通信を行う主な方法にT
日本薬剤師会の電子版お薬手帳がサービス運営体制の岐路に立たされている。2022年6月、開発・運営を担うNTTドコモからサービス終了を告げられたためだ。日薬は「お薬手帳を扱う事業者としてあってはならない判断」と不満を示すが、ドコモを相手取った訴訟の提起などは検討していないとする。代替サービスの構築を含め、今後の対応について2022年内に結論を出す考えだ。 「継続的な薬学管理の重要なアイテムであるお薬手帳を扱う事業者としてあってはならない判断だ」――。 日本薬剤師会が提供する電子版お薬手帳「eお薬手帳」が終了の危機に直面している。2022年6月、開発・運営を担うNTTドコモから突如、サービス終了の方針を告げられたためだ。日薬は2022年8月30日、各都道府県の薬剤師会担当役員に送付した文書で冒頭のように不満をあらわにした。 電子版お薬手帳は2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに必要性の
加えて近年はTLSを取り巻く状況が変わりつつある。Webブラウザーのベンダーやクラウド事業者は、旧バージョンの利用を禁止または非推奨にしている。旧バージョンにはセキュリティー上の問題があるからだ。旧バージョンを使用する企業は影響を受ける可能性がある。技術者はTLSの最新動向も押さえる必要がある。 本特集では、TLSの基本的な仕組みと最新動向を徹底解説する。 SSLの後継プロトコル TLSはSSL▼の後継プロトコルである(図1-2)。SSLは米ネットスケープコミュニケーションズが開発した。最初のバージョンであるSSL 1.0は1994年に仕様が完成した。だが脆弱性が見つかり、製品には実装されなかった。製品に実装されて実際に使われるようになったのはSSL 2.0からである。
NTT西日本は2022年8月25日、大規模な通信障害を引き起こした。30府県の最大211万回線でインターネット接続に支障を来した。発端は保守ネットワークにおける装置の収容数が推奨値を超えたことだった。1台の光伝送装置で動作が不安定となり、内部データベースの同期に失敗。ソフトウエアの不具合で装置が初期化され、顧客の通信にまで影響が及んだ。 「本当にご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした」。2022年9月30日、NTT西日本の森林正彰社長は8月25日に引き起こした通信障害に関して総務省から行政指導の文書を受け取り、記者団を前にこう陳謝した。 8月25日の通信障害は、NTT西日本の幅広い顧客に影響を与えた。「フレッツ光ネクスト」などの利用者が最大6時間近くにわたってインターネットに接続しづらくなった。同社は最大211万回線が影響を受けたと推計する。兵庫県や京都府など12府県の最大63万回線
マイナンバーカードの機能のひとつである「公的個人認証サービス(JPKI)」が2022年度内にもAndroidスマートフォンに搭載される。JPKIを使うことによりインターネットを通じてオンラインで本人確認ができる。民間事業者のJPKI利用が進むと期待されるが、一方でそのハードルはまだ高そうだ。 手数料無料化でJPKI利用促す 「(JPKI活用で)企業活動も便利になってくる」――。河野太郎デジタル相は2022年8月25日、日本経済団体連合会(経団連)にマイナンバーカードの普及と利活用について協力の要請に訪れ、オンラインショッピングや金融機関での口座開設、住所変更時の新住所取得などの用途を挙げてJPKIでの本人確認の利便性をアピールした。 マイナンバーカードのJPKIを活用することで、行政機関だけでなく民間企業もオンラインでの本人確認をスムーズに利用できる。オンラインサービスなどで、ユーザーが間
著名なセキュリティーリサーチャーのpiyokango氏が注目のシステムトラブルをピックアップ。今週の注目ネタは……。 今回は3件のシステムトラブルを取り上げる。全日本スキー連盟の会員情報流出とJR西日本のグループ会社からの個人情報流出、サンソウシステムズの不正アクセス被害である。 日付検索でエラーになる入力値で不具合が発生 全日本スキー連盟(SAJ)は2022年10月4日、SAJ会員の情報が流出した可能性があると発表した。SAJは会員管理サービスを提供するしゅくみねっとに会員情報の管理を委託していた。 しゅくみねっとの会員管理サービスのシステムに不具合があり、特定の条件下でサービスを利用する別の団体の管理者がすべての会員情報を閲覧したり、一部の会員情報をCSVファイルでダウンロードしたりできたという。特定の条件とは、サービスの日付検索でカレンダーから日付を選ぶ際、「yyyy/mm/dd(年
最近は新品でも安価に入手できるデバイスが増えてきた。こうしたデバイスに最新のLinuxを入れると、小型パソコンとして利用できるようになる。それぞれのデバイスの特徴に合わせた用途に使えるようLinux化する方法を紹介する。 iPadOSに似た「JingOS」と、Debianベースの「Mobian」を使い、タップ操作で使えるタブレット型のLinux PCを作ってみましょう。 実売3万円ほどで販売されている格安WindowsタブレットPCをLinux化して、Androidタブレットや米Apple社の「iPad」ライクに使えるようにします。中国のメーカーが作る、いわゆる「中華タブレット」は、低価格な割に十分な性能な持ち、Linuxをインストールして楽しむ余裕があります。 Linux化するデバイス WindowsタブレットPC「Teclast X16」 中国Teclast社が2021年に発売した「T
デジタル庁が取り組む組織改革が動き始めた。霞が関の縦割りを反映して、重複や乱立が放置されていたプロジェクトの整理と統廃合を進める。経営の視点から各プロジェクトの目標と成果の評価方法を定め、達成に必要な人的資源を最適配分する。民間出身である浅沼尚デジタル監の「経営手腕」が試される。 2022年4月26日に就任した浅沼デジタル監が改革の指揮を執る。改革を象徴する動きが、長く併存していた2つの行政手続きサイト「e-Govポータル」と「マイナポータル」を中長期で統合する方向性を打ち出したことだ。2つの政府サイトは、元は異なる省庁が運営し、デジタル庁に移管しても「隣が何をしているか知らずに仕事をしている」(デジタル庁職員)という、寄り合い所帯ぶりが現れた存在だった。 このほかにも特定プロジェクトでの独自開発をやめ、政府全体で使える機能開発に格上げすることを決めるなど、改革は形を見せつつあるという。こ
日本では次世代地デジの技術仕様の策定が進むも、実際に移行が始まるかどうかはほぼ白紙状態だ。一方、世界では移動通信技術ベースの「5Gブロードキャスト」が台頭し、早ければ2023年にも実サービスを始める国・地域が出てきそうだ。“放送と通信の融合”を超えて、通信に放送がのみ込まれる勢いになっている。 総務省などが進めている「地上デジタル放送方式の高度化」、つまりは次世代地デジに向けた技術仕様の策定作業は、2023年夏ごろにはいったん完了する。現時点で残っている2つの技術仕様の1つ「高度化実験方式」を開発したNHK放送技術研究所の技術者は、「仕様を決めてからチューナー用の半導体を開発するまでに1~2年かかる。このため、次世代地デジの開始は早くて2025年ごろになるのではないか」と実現時期の見通しを述べた。 3~4通りのシナリオが噂に ところが、もう少し幅広い放送関係者に事情を聴くと、こうした移行が
「1万円台で手に入る超格安スマホって使い物になるの?」調査プロジェクトです。今回は、スマートフォンのカメラ機能テスト中に違和感があった点について、より詳しく調べていきます。 具体的には、背面カメラの外装の個数(レンズ部分の個数)と、実際に有効なカメラの個数が違う、というものです。このカメラの個数の真偽について、最後には分解もして確認してみました。 違和感のあったスマートフォンは、全部で4機種ありました。「OSCAL S60」「Blackview A55」「CUBOT Kingkong Mini 2」、そして「UMIDIGI A3S」です。いずれも中国メーカー製です。これらは背面にそれぞれ、4眼カメラ、3眼カメラ、2眼カメラ、2眼カメラを備えているように見えます(図1)。
2022年7月2日からおよそ3日にわたって続いたKDDIの通信障害。規模の大きさや期間の長さなどから社会的にも極めて大きな影響をもたらした。同社による通信障害の詳細からは、通信障害がこれだけ大きなものとなった要因も見えてくる。 KDDIの通信障害はなぜここまで大規模になったのか 2022年7月初頭、大きな注目を集めることとなったKDDIの通信障害。2022年7月2日の深夜からおよそ61時間、3日にわたって影響が続いたこの通信障害は、4Gのネットワークで音声通話を担う「VoLTE」の部分を中心として障害が起こったことから、主として音声通話の利用に大きな影響が発生し、110番などの緊急通報ができなくなるなど深刻な事態をもたらした。 それに加えて企業が利用する一部のIoT通信にも影響が及んだ。それを用いた物流や銀行、行政などのサービスが利用できなくなるなど、間接的にも非常に多くの人に影響が及ぶこ
最近、Web3について解説したある入門書が「間違いだらけ」とネットで話題になっていた。他社の出版物なので書名を挙げるのは控えるが、検索すればすぐに見つかるはずだ。怪しい出版社の書籍ではなく、インターネット関連の書籍には定評のある技術系出版社が出版したものだ。 ネットでは、この書籍内でイーサリアムをOSと呼んでいたり、TCP/IPやHTTPといったプロトコルを米Googleや米Amazon.comが独占していると書いたりしている点が問題視されていた。これを見て私は当初、「よくある自転車置き場の議論ではないか」と思った。 自転車置き場の議論とは、知識が足りない人は本質的な議論ができず、自分が理解できる範囲のどうでもいい議論しかできないことを指す。この書籍に関していうと「Web3の仕組みを理解できないから、自分に理解できる範囲で揚げ足取りをしているだけではないか」と思ったのだ。 確かにイーサリア
ブロックチェーンやいわゆる「Web3.0(Web3)」、はたまたジャック・ドーシー氏が提唱する「Web5」まで、非中央集権をうたう様々な概念が乱立している。そのいずれにおいても重要な機能として語られることが多いのが、ユーザー自らIDや属性を管理できる分散ID (Decentralized Identity)であり、その主要要素とされる分散識別子(Decentralized Identifier、DID)である。 政府や大手企業に頼らず誰もが自身のIDを持てるという自己主権(Self-Sovereigen)IDとともに語られることが多いDIDだが、ブロックチェーンの登場とともに突然出てきたわけではない。その背景には少なくとも20年にわたる歴史がある。本稿ではその歴史をたどることにより、DIDの何が新しいか、また、DIDに何が欠けているか、そして今後の展望を考察する。 DIDとは何か DIDは
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