「圧縮された近代」の実例が観たくて台湾に行ってきた。 「圧縮された近代」という言葉はほとんどの人に耳馴染みのないものだと思う。 この言葉は、韓国の人口社会学者チャン・キョンスプが提唱した、韓国や台湾のような東アジア新興国の社会状況を語るための言葉である。 圧縮された近代とは、次のような社会状況である。 そこでは経済的、政治的、社会的、あるいは文化的な変化が、時間と空間の両方に関して極端に凝縮されたかたちで起こる。 そして互いに共通点のない歴史的・社会的諸要素がダイナミックに共存されることにより、きわめて複雑で流動的な社会システムが構成かつ再構成される。 (中略) 韓国は一方で、前例のないほど短い期間のうちに、資本主義的産業化と経済成長、都市化、プロレタリア化(すなわち小作農が産業労働者へと変容すること)、民主化の大幅な進展を経験してきた。 また他方で韓国の個人的・社会的・政治的生活の多くの