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ブックマーク / shorebird.hatenablog.com (5)

  • 書評 「招かれた天敵」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    招かれた天敵――生物多様性が生んだ夢と罠 作者:千葉聡みすず書房Amazon 書は進化生物学者千葉聡による天敵を利用した生物的防除の歴史を扱う大作.千葉は「歌うカタツムリ」でカタツムリを題材に淘汰と浮動の進化観をめぐる壮大な進化学説史を語ってくれたが,書では生物的防除の成功と失敗の歴史を滔々と語り,そのストーリーテラーの才能をまたも披露してくれている. 序章にあたる「はじめに」では,「自然」という著しく複雑で多様な系に対して科学の手法であるモデル化で対応することの限界とリスクが指摘され,より良い解決を望むなら歴史を知ることが有益ではないかと示唆されている.書は有害生物防除についての歴史を知るために書かれているのだ. 第1章 救世主と悪魔 冒頭はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」から始まる. 1939年に殺虫効果が発見されたDDTは人体への危険がほとんどないと認識され,マラリア撲滅の切

    書評 「招かれた天敵」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  「視覚の認知生態学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    視覚の認知生態学―生物たちが見る世界 (種生物学研究) 作者: 種生物学会,牧野崇司,安元暁子出版社/メーカー: 文一総合出版発売日: 2014/11/27メディア: 単行この商品を含むブログ (3件) を見る 種生物学会は学会のシンポジウムのを文一総合出版からシリーズものとして出版しており,書もその一冊.内容的には2009年のシンポジウム「生きものの眼をとおして覗く世界:生理学が支える認知生態学の可能性」が元になっている. 第1章は視覚の基礎知識.光が電磁波であり,視覚とは地上に届く太陽からの電磁波スペクトルの中の一部分を感知しているものであること,電磁波を神経パルスに変えるのはロドプシンであり,それはオプシンとレチナールからなり,オプシンの種類により波長の感受性が異なること,ヒトには青,緑,赤に感受性の高い3種類のオプシンがあり,ヒトの色覚はその感受性の違いを「青ー黄(緑+赤)」

     「視覚の認知生態学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  「Caught in the Pulpit」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    Caught in the Pulpit: Leaving Belief Behind 作者: Daniel C. Dennett,Linda LaScola出版社/メーカー: Pitchstone Publishing発売日: 2015/05/01メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る 書はダニエル・デネットとリンダ・ラスコーラによる「神を信じることができなくなった聖職者」についてのリサーチをまとめただ.ダニエル・デネットは著名な科学哲学者で「Breaking the Spell(邦題「解明される宗教」)」という宗教にかかるを著し,新無神論者の一人とされている.そしてそれに触発されたラスコーラと協同してこの「神を信じることができなくなった聖職者」についてのリサーチを始めることになる*1.二人はまず2010年にそのような聖職者5人のインタビューの分析を中心とする「Pre

     「Caught in the Pulpit」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  「進化するシステム」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    進化するシステム (シリーズ社会システム学) 作者: 中丸麻由子出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2011/11メディア: 単行購入: 3人 クリック: 57回この商品を含むブログ (9件) を見る 書はエージェントベースの進化ゲームの数理モデルやシミュレーションによりヒトの社会を理解するリサーチにかかるだ.単に順序立てて説明しているというより著者の関心の移り変わりを追っていくような面白い構成になっている. 第1章ではそもそも社会を数理モデルやシミュレーションで解析するとはどういうことかをまとめている.様々な数理モデル解析やシミュレーション解析の実例をまず挙げた上で,かなり実務的にリサーチ手法の概要や留意点を求めている. 第2章は理論編.まず進化と自然淘汰を概説した後,進化ゲームの基礎とESSの説明があり,タカハトゲームや囚人ジレンマゲームが取り上げられている.ここでは離

     「進化するシステム」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  「イカの心を探る」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    イカの心を探る 知の世界に生きる海の霊長類 (NHKブックス) 作者: 池田譲出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2011/06/25メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 10人 クリック: 207回この商品を含むブログ (9件) を見る 書はイカの知性に興味を抱いたイカの研究者の研究物語である.ヒト以外の動物の知性の研究については霊長類やイルカ,それに一部の鳥類のものが有名だが,イカというのは意表を突いている.書ではそのような研究にいたった経緯や研究の苦労物語を交えて語ってくれている. 書はまずイカとはいかなる動物かという紹介から始まる.分類学的にはタコやオウムガイと並んで軟体動物の頭足類に属し,大きくコウイカとツツイカに分かれるということになる.これらは全て海産である*1.日人はコウイカとツツイカを普通「イカ」と呼び区別しないが,英米では一般的な名称としてcuttlef

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