■要旨 新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、感染症に対応した医療制度改革の必要性が論じられている。中でも、感染症対策の最前線を担った保健所の機能強化が争点となっており、感染症対策に脆弱な医療制度の課題が浮き彫りとなっている。 では、なぜ感染症対策に対して脆弱なのだろうか。言い換えると、なぜ感染症対策は見落とされてきたのだろうか。歴史を振り返ると、保健所を中心とした公衆衛生システムを整備する際、日本は結核対策を重視してきた。このため、どこかのタイミングで、あるいは何らかの理由で感染症対策が軽視されるようになったと言える。 そこで、本レポートでは感染症対策を含めた公衆衛生の歴史を振り返ることで、感染症対策が見落とされてきた背景を探る。具体的には、一部で指摘されている行政改革による影響だけでなく、疾病構造の変化、公的医療保険の拡大、国民の意識変容、地方分権の影響など様々な要因を挙げる。その上
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