作家の円城塔さんによる「西暦2036年を想像してみた」、短編小説の本編(1/3)。誰もがクリエイターになれる時代、「働き手」にはどのような変化があるのか? キャラクターグッズ 昭和の風情を漂わせる商店街の突き当たりを左手に曲がると、小学校の正門が現れた。正門から国道へまっすぐ伸びる道のすぐ角に古ぼけたビルディングが立っている。外装はタイル、ガラスは時代ものなのか波打ち、アルミサッシはくすんでいる。 引き戸を開けると、中央の作業台の傍らに立っていた男が顔を上げた。台の回りには真剣な顔をした小学生たちの姿があり、部屋の各所の作業台でも小さな体が押し合いしている。外観とは対照的に、内部の色彩は鮮やかである。 「それは当然、版権の問題が生じることもありますね」と男が苦笑した。「子供の好きにさせておくと、それはまず、キャラクターものを作りますよ」と言う。カラフルな町工場のような室内に並ぶのは中古落ち