きっかけは犬 本連載は誠に思いがけないことがきっかけで始まることになった。 犬なのである。 そう言ったら、犬を不浄と見なすイスラム教徒のソマリ人は眉をひそめること間違いないが、本当なのだから仕方ない。 うちの妻は私と同業のノンフィクションライターだ。動物関係を得意とし、特に動物愛護・福祉については日本で最も詳しいライターの一人だろう。単行本も数多く書いているが、この数年、「いぬのきもち」という雑誌にて隔月で連載記事を書いている。題して「犬のために何ができるのだろうか」。飼い主から捨てられた、あるいははぐれてしまったなどして、保健所に収容され、「殺処分」されてしまう犬は毎年2万頭以上にものぼる。少しでもそのような犬たちの命を救うため、現在全国各地の行政や市民が犬の里親探しを行い、彼らが幸せな生活を始められるよう努力している。そういった活動を取材・執筆するのだ。 下調べを行い、取材先を見つけて