みなさんは、コイといえば何を思い浮かべるでしょうか。5月の空にはためく鯉のぼり、庭園の池を泳ぐ錦鯉、また「あらい」や「こいこく」などの郷土料理を思い起こす人もいるかもしれません。徒然草の第118段には「鯉ばかりこそ、御前にても切らるるものなれば、やんごとなき魚なり」とあり、古くは格式の高い食材でした。また、応挙や若冲など伝統的な絵画の中にもよく登場します。日本人にとってコイは文化的にも付き合いが古く、最も身近な魚といっていいでしょう。しかし、ここ15年ほどのDNA解析をきっかけに、日本のコイに対する科学的な見方は大きく変わりました。日本の生物多様性を守るという観点から、守るべき在来コイと、これに悪影響を及ぼす可能性の高い外来コイの存在が明らかになったのです。本稿では、このような結論に至った私のこれまでの研究とその背景を紹介し、現在行っている調査についても触れたいと思います。 コイが盛んに放