緊急事態宣言の期間が継ぎ足され続け帰省も諦めたお盆の終わり、気分転換にと学生時代からずっとお世話になっている美容院に行った。思い切ったピンクメッシュが入った帰り際、レジ横の本棚に『ゲームの王国』がささっていたのが目に止まった。前から題名は見聞きして気になってはいたけどなぜこんなところに、とよく分からない縁を感じて勢いのままに借りてきた。 良かった。 舞台は1970年代のカンボジア、クメールルージュによるクーデターと強硬支配という国の動乱の中で一市民にとっての現実がどのようなものだったかが視点を交代させながらありありと描かれていた。上巻をのめり込むように一気に読んだ8月17日の夜にちょうど、タリバンがカブールに侵攻し抵抗もなく首都が陥落したというニュースが流れてきた。混乱した夢の中のような革命とその後に続いた血生臭い歴史的事実を扱った1975年の物語から引き剥がされ、2021年の現実に起きて