老人たちの脳の衰えが進行するなか、雑誌出版社や新聞社が紙面づくりに苦しんでいる。以前なら常識だった事実を書いても、 「なにそれ? そんなことあった?」 と問い合わせが殺到するからだ。各社は歴史的事実にかかわる記事を掲載しないようにしたり、そもそも「なかった」ことにしてしまうなど対応に追われている。 都内出版社が発行する、ある雑誌。たびたび歴史をテーマに取り上げる硬派な誌面で知られていたが、ある日、読者だと名乗る老内科医から問い合わせを受けた。 「“アウシュビッツ”とか“ガス室”ってなんですか?」 頭の弱い人なのだろうとはじめは笑って取り合わなかったが、たびたび同様のクレームを受けるにつれ対応の必要性を痛感。読者にわかりやすいよう「ガス室はなかった!」との特集を組んだ。皮肉なことに、この号は過去もっとも支持をあつめることになったという(同誌はその後廃刊)。 新聞も老人対策にいそがしい。首都圏