プーチン大統領が自らをピョートル大帝に模したことが話題だ。17世紀末から18世紀初頭にかけて、ロシアの拡張主義的政策を主導したピョートル大帝への参照は、プーチン大統領の野心を明らかにしたものだと受け止められている。 だが本当の論点は、むしろプーチン大統領をこえた地点にある。拡張主義は、ロシアという国家の本能的な性質か否か、が大きな論点だ。冷戦時代には、「ソ連」は共産主義という特殊なイデオロギーを掲げていたがゆえに拡張主義をとっている、という見方もあった。これは共産主義体制の崩壊に伴う冷戦の終焉によって、ロシアは拡張主義をとることをやめる、という楽観論につながっていった。 これに対して、「ロシアは拡張主義をとる本性を持つ」、という洞察を提示する論者も多々存在している。まさにピョートル大帝の時代に「ヨーロッパ」にロシアが参入してきた時代からの長い歴史的スパンで見るならば、ロシアが「ソ連」などを