東京大学社会科学研究所教授 大沢真理 日本社会の貧困問題、とくに子どもの貧困が話題になり、その貧困が世代を超えて連鎖しないようにすることが、政府の課題とされました。 きっかけの一つは、厚生労働省が7月に最新の調査結果を公表し、貧困率が過去最悪だったことです。もう一つは、8月29日に子どもの貧困対策に関する政府の大綱が閣議決定されたこと。その大綱に貧困の連鎖を防ぐことが謳われています。 2012年には人口全体の16.1%の人々の所得が、この122万円という貧困基準を下回っていました。1986年にこの調査が始まってから、最悪の数字です。18歳未満の子どもで、貧困基準以下の世帯に暮らす割合は16.3%。これも過去最悪でした。16%というのは、約6人に1人、40人のクラスなら6.5人です。 ただし、日本で子どもの貧困が話題になったのは、今回が初めてではありません。経済協力開発機構OECDのよ