日中戦争から数えれば、世界中を巻き込んで日本が起こした戦争は8年に及んだ。 中国で戦争を始めた頃、後に戦火が拡大し、日本に暮らす人々まで惨禍にまみれることになるなど多くの人が思ってもいなかった。日本が軍隊を送った地では既に、大切な家族や日常が奪われていたにもかかわらず。 国民も報道も沸き立つ中、高揚する気持ちを抱えつつ、自らが見た「戦争の風景」を大事にした一人のカメラマンの話をしたい。【春増翔太/東京社会部】 連載「残像・戦争の記憶と記録」は、全5回です。 このほかのラインアップは次の通りです。 第1回 「特攻と桜」は悲劇を映す 第2回 「8・15」のメモをたどれば 第3回 漫画「セレチャン」知ってますか? 第5回 そして従軍日誌だけが残った 入城式取材、望外の名誉 1937(昭和12)年12月16日夕、薄暗くなった中国・南京の街に、同僚と共にはしごを抱え、カメラを手に駆け回る男性がいた。