ということで、「EQ」1979年3月号の書評「独断と偏見」より。「EQ」p110-111。ほとんどの太字は引用者(ぼく)によるもの。 おそらく----『ミステリの原稿は夜中に徹夜で書こう』の書評には、わたしは向いていないのかもしれない。著者は、ジャズ、映画、ミステリー……何でも評論し、その評論ぶりが多くの人たちに愛され、高く評価されている外国通なのだそうだ。エッセイ・評論集が何十冊も出版されているのだから、そうなのだろう。だが、ことミステリーに関するかぎり、わたしには、なぜ氏が高く評価されているのか、理解に苦しむ。氏のよき読者ではないからだろう。 たとえば----本書は、海外ミステリー随想、書評、ミステリー講座の三本立てになっていて、起承転結のない、世にいう植草調なる文章がつづいている。だが……これほど独断と偏見にみちた本も珍しい。さらにミステリー専門出版社から刊行されたにもかかわらず、そ