村上春樹の同名短篇小説に、さらに二篇を接続して映画化した濱口竜介の新作『ドライブ・マイ・カー』が全国で公開中だ。妻を失った演出家・家福(西島秀俊)と彼の愛車サーブ 900を運転することになったみさき(三浦透子)。カメラはふたりの移動を捉えながら、その関係の微細な移ろいと響き、そして目には見えない「信じ得るもの」を描き出す。過去作にない方法で、劇中に用いられるチェーホフのセリフに倣えば「いつ明けるとも知れない夜また夜」を主人公たちと共にくぐり抜けた監督にインタビューをおこなった。 ──本作からはとても新鮮な感触を覚えました。そのひとつが手話表現で、これまでの「言葉の映画」の魅力を踏まえながら、新しいステップに挑まれています。 神戸滞在期に、〈さがの映像祭〉という聴覚障害者映像祭に呼んでいただく機会がありました。そこで、健聴者は僕や通訳の方ぐらいで、周りの方たちは手話で話している状況に置かれま