◇「何用あって月世界へ?」 本質突く、偏屈じいさん--山本夏彦さん(02年死去) やたら暑い夏である。1年前は「政権交代」の風が吹いていた。その風もない。オールド自民党に絶望し、ニュー民主党に幻滅した。国民もメディアもいささかぼうぜんとしている。なおさら暑さがこたえる。大正生まれのコラムニスト、山本夏彦さんが懐かしい。「よせやい、カレーじゃあるまいし」。そんな文句も聞こえてくるが、とびきりの辛口コラムが懐かしい。 だが、夏彦さんはもういない。それなら、と元毎日新聞記者の徳岡孝夫さん(80)を横浜の自宅に訪ねた。大阪社会部の出身で、サンデー毎日時代、三島由紀夫事件に遭遇し、市ケ谷の現場で手紙と檄(げき)文(ぶん)を託された。晩年、しょっちゅう夏彦さんを囲んでは飲んでいたらしい。「夏彦さん、あそこですわ」。せみ時雨も心地よい、離れの書棚の最上段に夏彦さんの著作が並んでいた。その下は三島全集がび