現在、筆者はドイツのベルリンに滞在している。この連載では、「欧州の首都」と呼ばれることもあるこの地にあって、現代の政治思想・政治哲学の「いま」を、心象スケッチ風に考えていきたい。 * この街を歩いていて(といっても、筆者がふらついているのは、大学や書店、雑誌スタンドなどの周辺ばかりであるが)、マルクスの肖像画を目にすることが多い。考えてみれば、今年(2018年)はマルクスの生誕200年にあたる。誕生日である5月5日を中心に、さまざまなマルクス関連企画があっても不思議ではない。 ベルリン観光の中心ウンター・デン・リンデンの通りから一本入ったフリードリヒ通りには、大型書店のドゥスマンがある。といっても、店を入ってすぐに目につくのは、CDやDVDの売り場ばかり。哲学のコーナーまで行くには、だいぶ上の階に上がらなければならない。カント、ヘーゲルを生んだこの国にあっても、もはや哲学はそれほど厚遇され