国際秩序 [著]ヘンリー・キッシンジャー 国際政治学者キッシンジャーの基本的な歴史観・世界観を凝縮した研究書である。フォード政権で国務長官も務めたのだから、その理論は現実の中で応用、援用あるいは微調整されていたことも窺(うかが)える。加えて本文中にはわずかとはいえ、「私は」という主語のもとで自らの出自や生育時の歴史的環境も語られていて、それが論の裏打ちの役割も果たしている。 人類史はこの数世紀、どのような国際秩序をつくろうとしてきたのか、それぞれの地域の特性はどう生かされたのか、政治家や外交官、戦略家たちはどういった思想・哲学のもとで動いたのか。それらを実証していくわけだが、これには幾つかの尺度や教理が必要である。 著者はその教理のひとつにヴェストファーレン(ウェストファリア)条約を挙げる。「(この条約は)世界中にひろまっている新しい国際秩序の概念の先駆けとして、格別な共鳴を得ている」と高