「解説」が鶴見俊輔さんの手によるものだから、橋川文三『昭和維新試論』講談社学術文庫、読み始めたが、のっけから(序)、吉野作造の「深み」示すエピソードに言及があり驚愕(鶴見さんの「解説」でも大きく紙面を割いている。 解説部分↓ - 大正一〇年(一九二一年、これは橋川文三のうまれる前の年におこった、朝日平吾による安田善次郎暗殺は、時の首相原敬の日記では、「兇漢は不良の徒にて特に安田に怨恨ありし者にはあらざるが如し」と簡単に書かれ、偶発的凶行としてかたづけられている。 しかし、同時代に対するかんをもっていた「読売新聞」記者は、大久保利通の暗殺、森有礼の暗殺、星亨の暗殺、伊藤博文の暗殺以上に「思想的の深み」のあるものとして、朝日平吾による安田善次郎暗殺をとらえていた。 たしかに、首相も大臣もつとめたことのない一富豪の暗殺は、暗殺者の遺書によって見る時、日露戦争終結後にはじまる新しい流れのあらわれだ
