『ブラック・スワン』95点(100点満点中) Black Swan 2011年5月11日(水)より、TOHOシネマズシャンテほか全国拡大ロードショー 2010年/アメリカ/カラー/108分/配給:20世紀フォックス映画 監督:ダーレン・アロノフスキー 脚本:マーク・ヘイマン、ジョン・マクラフリン、アンドレス・ハインツ 出演:ナタリー・ポートマン ヴァンサン・カッセル ミラ・キュニス バーバラ・ハーシー ウィノナ・ライダー ≪天才の誕生過程≫ 菅直人首相が浜岡原子力発電所の即時停止を命じたという。電力不足が起きるぞと原子力村民たちが早くも国民を脅し始めているようだが、もとより浜岡原発は点検にかこつけて年間200日とか300日も休んでいるぐうたら原子炉の集まりである。いまさら残る2つを止めたところで電力など不足するはずもない。 この決断には自民党議員の一部が猛反発しているが、これでは首相の思う
『ミスター・ノーバディ』97点(100点満点中) Mr.Nobody 2011年4月30日、ヒューマントラストシネマ渋谷他、全国順次ロードショー 2009年/フランス、ドイツ、ベルギー、カナダ/カラー/137分/提供:アスミック・エース エンタテインメント 配給:アステア 監督・脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマル 撮影:クリストフ・ボーカルヌ 美術:シルヴィー・オリヴィエ 編集:マティアス・ヴェレス、スーザン・シプトン 出演:ジャレッド・レトー サラ・ポーリー ダイアン・クルーガー リン・ダン・ファン ≪超絶技巧の傑作、年間ベストワン候補の筆頭≫ かつてイギリスにドリアン・イエーツというボディビルチャンピオンがいた。驚異的なバルクと低頻度高強度の斬新なトレーニング理論を実践したことで、時代を変えたチャンピオンとして今でも大きな尊敬を受ける人物だ。 彼がユニークなのは、ボディビルを始めよう
『10億円稼ぐ』70点(100点満点中) 2010年11月20日より渋谷シネクイントにてロードショー 2010年/日本/カラー/99分/配給:エイベックス・エンタテインメント 企画・プロデュース・監督:テリー伊藤 制作会社:株式会社ロコモーション 配給:エイベックス・エンタテインメント 出演:テリー伊藤 NIGO ラッキー池田 ≪起業家にとって、忘れがちな初心がある≫ 金儲けというのは難しいが面白い。たとえば中国には、乾燥わかめと偽って黒ビニールをつめて売る会社があるそうだが、詐欺的手法もそこまでいくと怒りを通り越して笑いしか出ない。昔はペンキで塗っただけのカラーひよこなんてのが売られていたが、黒ビニールはもやは食品ですらない。後先考えないにもほどがある。 そんなわけで、金もうけをしようと奮闘する人を見るのも案外面白いものだ。『10億円稼ぐ』は、そのあたりの心理を刺激する「金儲け実践ドキュ
『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』90点(100点満点中) 2010年3月6日 全国東宝系ロードショー 2010年/日本/カラー/133分/配給:東宝 原作:甲斐谷 忍「LIAR GAME(ライアーゲーム)」(ヤングジャンプコミックス) 監督:松山博昭 出演:戸田恵梨香 松田翔太 時代にマッチしている上、脚本の骨格がきわめて頑健 たぶんこの映画についてほとんどの方は、こんな風に考えているだろう。 「え、日本映画? 安っぽそう」「え、フジテレビの映画? 軽そう」「え、テレビドラマの映画化? 映画だけ見てもわかんなそう」「とにかく、つまんなそう」 その気持ちはわからぬでもないが、なんと本作に限ってはすべてよい意味で裏切られた。こういうことはめったにあるものではない。 いよいよライアーゲーム決勝戦。手段を選ばず大金を奪い合うこのだましあいゲームも、いよいよ最後だ。ここまで残ったのは男女あ
『インビクタス/負けざる者たち』75点(100点満点中) Invictus 2010年2月5日(金)丸の内ピカデリー 他 全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/134分/配給:ワーナー・ブラザース映画 監督:クリント・イーストウッド 脚本:アンソニー・ペッカム 出演: モーガン・フリーマン マット・デイモン トニー・キゴロギ 南アW杯の年に、南アW杯の映画を見る あるひとつのものに、さまざまな側面があったり多機能だったりすると、無性にうれしいものだ。 たとえばこの『インビクタス/負けざる者たち』という映画は、スポーツアクションであり、史実伝記であり、感動の人間ドラマでもある。さらにいえば、95年の南アフリカを舞台にしていながら、じつは現在のアメリカを強烈に比ゆした物語でもあったりする。こういう百面相の作品は、映画好きにはたまらない。清純派だけど夜は女王様、みたいな女性がモテるのと
『マイマイ新子と千年の魔法』70点(100点満点中) Mai Mai Miracle 2009年11月21日(土)より全国ロードショー 2009年/日本/93分/35mm/カラー/ビスタサイズ/ドルビーデジタル 配給:松竹 作者:高樹のぶ子 監督・脚本:片渕須直 声の出演:福田麻由子 水沢奈子 森迫永依 本上まなみ 説明できない良さ 『マイマイ新子と千年の魔法』は、たぶん興行的には相当厳しいのではないかと心配している。 なぜならこのアニメーション作品は、その良さを理解してくれるであろう対象年齢層が非常に高いためだ。はたしてそうした人々に、適切なプロモーションを行っていけるか。宣伝会社の手腕が問われるところだ。 昭和30年代、山口県防府市。空想好きな小学三年生の少女・新子(声:福田麻由子)は、東京からの転校生でこの土地になじめない貴伊子(声:水沢奈子)と仲良くなる。やがて新子の友達である男の
『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』70点(100点満点中) 2009年11月21日(土) よりシネクイント他 全国ロードショー! 2009年/日本/カラー/101分/配給:アスミック・エース 監督:佐藤祐市 原作:黒井勇人 脚本:いずみ吉紘 出演:小池徹平 マイコ 田中圭 品川祐 池田鉄洋 高校生に授業で見せるべき映画 この秀逸なタイトルは、原作となった2ちゃんねるのニュース速報(VIP)板におけるスレッドの名前から取ったという。とくに「ブラック会社」という、最近よく聞く用語の名づけが上手いと思う。 若いころに勤務した会社が倒産したりして、結果として多数の職場を転々とする事になった私も、「ブラック会社」については身をもってよく知っている。当時のつらい経験のおかげで、求人広告を見ればその会社が黒か白かだいたい判別できる能力を得たが、現代はそんな苦労をせずともインターネ
先日『Shall we ダンス?』の日米版の映画を見て、ノベライズも読んだ話は「極東ブログ:[書評]Shall we ダンス?(周防正行)」(参照)に書いた。その後、本書、「『Shall we ダンス?』アメリカを行く(周防正行)」(参照)を文庫本のほうで読んだ。 『Shall we ダンス?』日本版の映画が公開されたのは1995年。その後、この映画に目をつけたアメリカの映画配給会社とのやりとりを周防監督自身が紀行文風にまとめたもの。随所の写真も独自の味わいを添えている。文庫化の前は1998年に同題で大田出版から出版されていたものだ(参照)。本書の経緯についてはそれ以上私は知らないが、一部は文藝春秋にも掲載されたようだ。 話は時間順に展開され、途中同じような話がぐるぐると循環しているような印象もあるが、映画産業論としても、また映画を基軸にした日米欧の体当たり文化論としても非常に興味深い。随
『ココ・シャネル』75点(100点満点中) Coco Chanel 2009年8月8日よりBunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館他にて全国ロードショー 2008/アメリカ・イタリア・フランス/138分/カラー/配給:ピックス 監督:クリスチャン・デュゲイ 脚本:エンリコ・メディオーリ コスチューム・デザイナー:ピエール=イヴ・ゲロー 出演:シャーリー・マクレーン バルボラ・ボブローヴァ マルコム・マクダウェル ファッション業界一のカリスマの波乱万丈な人生 創業100周年ということで、3本のシャネル映画が封切られる予定だが、その先鋒をつとめる本作も期待通りの見事なできばえであった。 本作は劇映画の形式を取った伝記ドラマで、物語は1954年、久々にファッション界に復帰したココ(シャーリー・マクレーン)の新作ショーが不振に終わり、彼女が過去の栄光を回想するところから
『サンシャイン・クリーニング』85点(100点満点中) Sunshine Cleaning 2009年7月11日、渋谷シネクイント、TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー 2009年/アメリカ/カラー/92分/配給:ファントム・フィルム 監督:クリスティン・ジェフズ 脚本:メーガン・ホリー 出演:エイミー・アダムス エミリーブラント アラン・アーキン スティーブン・ザーン メアリー・リン・ライスカブ オレはもうだめだ、と思ったらこれを見よう 今のように景気の悪いときは、映画は比較的安価な娯楽として重宝される。そしてこういう時代において、『サンシャイン・クリーニング』のようなルーザームービー、いわゆる弱者応援歌のような作品は、多くの人々を励ます貴重な存在となるだろう。 かつてチアリーダーとして学園のアイドルだったローズ(エイミー・アダムス)も、いまや30代のシングルマザー。仕事はしょぼく
『チョコレート・ファイター』60点(100点満点中) Chocolate 2009年5月23日(土)より、新宿ピカデリー他全国ロードショー 2008年/タイ/カラー/110分/配給:東北新社 PG-12 監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ アクション監督:パンナー・リットグライ 出演:“ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン 阿部寛 ポンパット・ワチラバンジョン タブーだらけのタイ製リアルアクション 試写会でこれを見終わった後、熱心な映画会社のお兄さんが追いかけてきて感想を聞いてきた。それに対し私は「申し訳ないけどこれは(マスコミでは)紹介できないよ」と回答した。 2時間を6時間ほどに感じさせるような、時空を捻じ曲げるパワーを持つ駄作の場合も似たようなことを言う場合があるが、本作はそれには当たらない。むしろ、世界的に見てもすぐれた部類に入るアクション映画なのに、だ。 日本のヤクザ(阿部寛)とタ
新宿にて。北野武新作。前二作である『TAKESHIS’』『監督、ばんざい!』については、見る勇気がわかず、劇場へいくのはスルーしてしまったのですが(未見のまま…)、『ソナチネ』の監督を無視していいのか、という義務感みたいなものがあって、見てきました。主人公の描き方がとてもよくて、見終わった後にずしんと不安な気持ちが残るようないい映画でした。売れない画家が、死ぬまで絵を描きつづけようとするというあらすじ。 表現に取り憑かれてしまった人は、表現以外のことをするという選択肢がほとんどなく、平日は会社員をやって、土日で絵を描くというような器用なことができない。表現と社会性とは相容れない。なぜなら彼が道を歩いていて、にわとりがいたとすれば、にわとりの絵を描きたくなるに決まっているのであって、出社途中だとか、社員としての責任がとか、そういった問題ではなく、今すぐ、ここでにわとりをスケッチしなければ彼は
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