◇思いやり、共食と音楽から−−山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 複数の家族を含むコミュニティーは、サルや類人猿には見られない人間だけの特徴だ。家族とコミュニティーはそもそも維持される原理が違う。家族は見返りを求めない援助と協力によって、コミュニティーは集まることで利益が得られるような互酬性や規則によって、それぞれ成り立っている。しばしばこの二つの原理は拮抗(きっこう)する。地域社会の厄介者が、家族では最良の父親という場合があるのだ。その矛盾に耐えられないから、サルや類人猿はどちらかの原理により強く依存して群れを作る。 ではなぜ、人間だけが家族を温存したコミュニティーを作ったのか。その背景には文化的な理由より、生物学的な要因が大きく関与していたと私は考えている。 最近、オランウータン、ゴリラ、チンパンジーなど類人猿の野生における成長や繁殖の特徴が明らかになって、人間の生活史の不思議な側面が浮か
東日本大震災後、東京都民の「水道水離れ」が続いている。昨年4月〜今年2月の11カ月間の総供給量(計13億5381万立方メートル)は前年同期比2.6%減で、料金収入だと98億4200万円のマイナス。ここ10年ほど「おいしい水」のPRに力を入れてきた都水道局は「安心・安全と味の両方を追求してきたのに」とショックを受けている。 水道水離れの最大の要因とみられるのは昨年3月22日、金町浄水場(葛飾区)で乳児の飲料に関する当時の暫定規制値(1キロ当たり100ベクレル)を超える210ベクレルの放射性ヨウ素が検出された騒動だ。 2日後に規制値を下回ったが、同8月に約1000人に実施したアンケートでは、水道水について28%が「不安」と答え、その9割近くが放射性物質の影響を理由に挙げた。 原子力発電所の停止に伴う夏の節電も、需要減に拍車をかけた。空調に使う冷却水の使用などが減り、昨年9月は前年比5.1%減と
◇ブラックボックスの内部は「調整の現場」だった 08年末の「年越し派遣村」村長として知られる湯浅誠さんが今月7日、内閣府参与を辞任した。政府の外から貧困対策を訴えてきた社会運動家が、政権内に入って約2年。中に入って見えたものは?【山寺香】 ◇求められれば関わり続ける 湯浅さんが最初に内閣府参与になったのは、民主党に政権交代した直後の09年10月。派遣村村長として政府を厳しく批判してきた人物の登用は、注目を集めた。10年3月に一旦辞任し、同年5月に再任用された。 この間の政権の変化をどう見ているのか。 「漠としたイメージで言うと、従来の自公政権から一番外れたのが鳩山由紀夫政権でした。そこで提示された格差・貧困政策の方向性はおおむね歓迎すべきものでしたが、その後の菅直人政権で少し戻ってきて、野田佳彦政権でかなり戻ってきた。菅さんのころから、かつての自民党の幅の中に収まってきたと感じています」。
◇求められる常識の再構築 最近、海外で広く認知されるようになってきた日本発の歌姫をご存じだろうか。米国ではトヨタのCMに起用されて注目を集め、昨年7月にはロサンゼルス最大のライブ会場「ノキアシアター」でライブを行った。前売り券は2週間で完売。当日は6000人の観客を熱狂させ大成功。ロサンゼルス・タイムズにも取り上げられ、NHKニュースでも紹介されたのでご覧になった方もいるだろう。くるぶしまで伸びた青緑の髪と、同じ色の大きな目が印象的な少女。もちろん実在の人間ではない。 彼女の名前は「初音(はつね)ミク」。ヤマハの開発した音声合成システムに、北海道のクリプトン・フューチャー・メディア社がキャラクター付けして販売した音声合成・デスクトップミュージックソフトウエアの製品名だ。パソコンでメロディーと歌詞を入力することで合成音声で歌わせることができる。初音ミクに自作の歌を歌わせて、ニコニコ動画やYo
◇試される我々の力量 「正しい独裁者」という言葉がある。トルコの建国の父、ケマル・アタチュルクを紹介するときに使われる言葉だ。政教分離から始まり、メートル法やアルファベットベースのトルコ文字の導入、女性がベールを必要としないという服装改革まで。一説には明治維新を参考にしたと言われるが、それ以上のことをケマルは十数年という短期間で、ほぼ一人の力で行った。宗教社会の改革のため強い独裁権を必要とした彼は、一度自ら引退する。議会が国内の混乱に困って「戻ってきてくれ」と泣きつくのを待ち「私の提案に対し議会は討議なしに採決すること」という条件を飲ませ大統領になる。 「我が国民が進歩への道をしっかりと方向を間違えずに歩けるようになったとき、私は全ての権力を手放すつもりだ。だが、我が国民の歩みは始まったばかりなのだ。すなわち、私を殺すことはトルコ国民の未来を奪うことだ。もっとはっきり言おう! 現在の時点に
◇米「年内覚書締結を」 UAEも参加、安全保障前面に 使用済み核燃料、いわゆる「核のゴミ」の国際的な最終処分場を日米主導でモンゴルに造る計画が、水面下で加速している。5月に毎日新聞が計画を報じた後、モンゴルから核燃料の供給を受けたいアラブ首長国連邦(UAE)が新たに加わり、米エネルギー省が今月、了解覚書(MOU)を年内に締結したいと関係各国に打診した。安全になるまで最低10万年はかかる核のゴミを、未来の世代に押しつけ、先進国が途上国に負わせる構図。世界で唯一、最終処分場を建設中のフィンランドも訪ね、核のゴミを巡る問題に迫った。【オルキルオト(フィンランド南西部)会川晴之】 3人の男がモンゴルの首都ウランバートル郊外にあるチンギスハン空港に降り立ったのは、春まだ浅い09年5月6日だった。 「モンゴルは東洋のスイスになるべきです」。米シンクタンクの2人と経済産業省の官僚が、バトボルド外相(現首
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