HUMAN HISTORY 弁護士の肖像 私は仕事を「過労死事件100%」、にはしない。世の中に対する見方、考え方が偏らないためには、多様性を大事にするべきという実感があるから 「川人さんのおかげで、娘の尊厳を守ることができましたし、私が今生きていられるんだと――」。2015年暮れ、電通の新入社員だった高橋まつりさんが、1カ月100時間を超える残業を課せられた末に自殺した事件は、社会に大きな衝撃を与え、「働き方改革」推進のきっかけともなった。まつりさんの死の労災申請につき、遺族代理人となり、労災認定を勝ち取ったのが、川人博だ。冒頭の言葉は、川人を取材したNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で、まつりさんの母親・幸美さんが語った感謝の一言である。 1988年、「過労死110番」の運動にかかわった頃、それは「自己責任」とされ、遺族が救済されることはなかった。企業責任を認めさせるところまで世の