科学と人のために「実験体」に パンデミック発生から1年ほど経過した、寒く湿った月曜日のことだ。ジェイコブ・ホプキンスはロンドンのとある病院で頭を後ろに傾け、人類初の試みを行った。全身を防護服で覆った5人の医師に、新型コロナウイルス感染症を発症させる懸濁液を鼻腔内に注入させたのだ。 ホプキンスはその後、全世界で5億4600万人以上にも上る、科学者の間では「SARS-CoV-2」として知られるウイルス感染者の1人となった。 彼がそんな行為に出たのは、科学のためである。 ホプキンスは、地球上で最も重大な影響をもたらしたウイルスに関する「ヒューマンチャレンジ研究」に参加した、36人の健康な若者の最初の一人だった。この研究手法は、ウイルスがいかにして、どこで、どれくらいの期間、人の体内に定着するかについて知見を得るための効率的な方法として、イギリスでは広く受け入れられている。 コロナウイルス感染症の