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ブックマーク / kazu-yamamoto.hatenablog.jp (22)

  • さようなら遅延評価 - あどけない話

    Haskellがとっつきにくい原因の一つに遅延評価がある。入門書では、無限リストと遅延評価がことさら強調される。しかし、Haskellを業務で使ってみると、遅延評価が煩わしくなってくる。遅延評価なしでもほとんどのことは実現できるし、メモリーの使用量は推測できないし、あまりいいことはない。 Haskellの評価戦略が、他の言語と同じように正格評価だったらよかったのに。 今まで、このようなセリフを何度聞いたか分からない。 そもそも遅延評価が役立つことはあるのだろうか? ある。お世辞抜きに、少なくとも以下の3つでは当に役立つ。 リスト(あるいは類似のデータ構造)処理 純粋性に対する暗黙のテスト 効率的なCAS 1.はよいだろう。2.は純粋さを守るために必要だが、コンパイラを開発する人にとって重要なのであり、ユーザには関係ない。3.は、並行プログラミングの奥義である。atomicModifyIO

    さようなら遅延評価 - あどけない話
  • Haskellと副作用の議論の続き - あどけない話

    twitter で続いている Haskell と副作用、および参照透明性の議論ですが、twitter ではコードを示しにくいので、ブログに書きます。これに対する返答は、twitter でも構いませんし、ブログに対するコメントでもいいですし、トラックバックでも OK です。 多くの人が納得できる説明が見つかるといいですね。:-) 副作用と参照透明性 僕はもともと命令型言語のプログラマーなので、「副作用」という言葉は命令型言語のプログラマーが使う意味で使っています。 Simon Peyton Jones さんは、Beautifull Code というの中で「副作用(side effect)とは、変更可能な状態を読んだり書いたりするような何か」と書いています。そして、副作用を表す型を IO a としています。 Brent Yorgey さんは、The Typeclassopediaで「IOモナ

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  • Real World Haskell の古いところ - あどけない話

    Real World Haskell の内容が古くなってきたので、どこが古いかとか、それに変わる新しいものは何とか、まとめたいと思う。 Real World Haskell―実戦で学ぶ関数型言語プログラミング 作者: Bryan O'Sullivan,John Goerzen,Don Stewart,山下伸夫,伊東勝利,株式会社タイムインターメディア出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2009/10/26メディア: 大型購入: 8人 クリック: 245回この商品を含むブログ (76件) を見る 1章 始めましょう 今でも通用する。 2章 型と関数 今でも通用する。 3章 型を定義し、関数を単純化する 今でも通用する。 4章 関数プログラミング ghc に --make オプションはもう不要。 5章 ライブラリを書く 5.14節では、"runghc Setup build" の

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  • Haskell ポインタープログラミング - あどけない話

    早いもので、今年も12月25日となりました。メリークリスマス! うちのちびっ子怪獣たちも、サンタさんに書いた手紙通り、レゴをもらってご満悦のようです。 そして今日は、Haskell Advent Calendar 2013 の最終日でもあります。 Haskellらしい? 「純粋なコードで構成するのが Haskell らしいプログラムであり、IOはHaskellらしくない」という発言をよく耳にします。 確かに、命令プログラミングの世界から関数プログラミングの世界にやってきたとしたら、 不変データを使った永続データプログラミング 部品プログラミング 純粋なコードに対する性質テスト などには、衝撃を受けることでしょう。 でも、純粋なコードは、Haskell の世界の半分でしかありません。そこは、コンパイラーという保護者に守られた未成年の世界です。Simon Peyton Jones さんの言葉を

    Haskell ポインタープログラミング - あどけない話
  • Hash-flooding DoS と SipHash - あどけない話

    以前、僕が実装している web サーバ Mighty が、Haskell で書いているにも関わらず、セグメンテーションフォールトを起こしていた。調べたところ hashable ライブラリがリンクする C の DJBX33X が、SipHash に変わったことが原因だった。このときから SipHash が気になっていたし、以前社内で説明した "Efficient Denial of Service Attacks" との関係も知りたかったので、少し調べてみた。この記事は、その覚え書き。 Hash-flooding DoS の歴史 1998 年に Alexander Peslyak 氏が Phrack Magazine で、Hash-flooding DoS を受けたことを報告している。ハッシュは、N 個の要素を挿入するのに通常 O(N) かかるが、ハッシュ値がすべて衝突する最悪の場合では O

    Hash-flooding DoS と SipHash - あどけない話
  • Haskellでの例外処理(その2) - あどけない話

    Haskell での例外処理の続き。今日は例外を投げるよ! throwIO IO の中で、例外を投げるには throwIO を使います。 throwIO :: Exception e => e -> IO a Exception型クラスのインスタンスを渡せばよさそうです。Control.Exceptionのマニュアルを読むと、Exception型クラスのインスタンスとして、IOException や ArithException があるのが分かります。 この中から、データ構成子が公開されているものを探してみましょう。ArithException は、データ構成子を公開していますね。その一つである、Overflow という例外を投げてみましょう。 > :m Control.Exception Control.Exception> throwIO Overflow *** Exception:

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  • Haskell でのデバッグ - あどけない話

    「純粋関数型言語はデバッグしにくい。だって純粋な関数で printf デバッグできないから」とつぶやいている人をよく見かけます。これまで放置してきましたが、リツイートが50を超えたので、Haskellでのデバッグについて書きます。 例外処理と同じように、Haskell でのデバッグでは、純粋な関数と IO を分けて考える必要あります。 IO での printf デバッグ IO では、putStrLn や print が使えるから問題ないですよね? foo :: Int -> IO Bool foo i = do x <- あれして i putStrLn $ "x = " ++ show x これして putStrLn "ここも通過" -- それもする y <- それもする print y return y ちなみに、forkIO 起動した軽量スレッドから putStrLn する場合、軽量ス

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  • Haskellでの時間の取り扱い - あどけない話

    Haskell には、以下のような時間用の型がある。この記事は、どれを使えばいいかの解説。 time ライブラリの Data.Time.Clock の UTCTime old-time ライブラリの System.Time の ClockTime base ライブラリの System.Posix.Types の EpochTime UTCTime 速度を気にしないなら、UTCTime を使う。getCurrentTime で現在の時間を取得できる。 パーサーやプリティプリンタは Data.Time.Format を参照のこと。TimeLocale は、old-locale ライブラリのを使う。old でない locale ライブラリがないのは、Haskell の恥の一つ。 Data.Time.Format は、信じられないぐらい遅い。たまにプリティプリントする用途にはいいが、Web サーバ

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  • Lensことはじめ - あどけない話

    見ろ! Haskell が OOPL のようだ! さてさて、ようやく重い腰を上げて、Lens を勉強し始めましたよ。Haksell for allを見て勉強すればいいのかなと思ったんですが、解説しているパッケージが data-lens なので古いですね。 今、使うべきなのは、lens というパッケージらしいです。解説は、この README を読むのが一番だそうです。この README と Haskell for all をにらめっこしながら、Lens の getter と setter の機能を使ってみます。 背景 Haskell の代数データ型にはフィールドラベルが定義できて、これがいわゆる getter と setter の役割を果たします。Haskell for all から例を引用してみましょう。 data Point = Point { x :: Double , y :: Do

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  • GHC でスタックトレース - あどけない話

    これまで GHC では、スタックトレースを取ることが有効なデバッグ方法ではなかった。 なぜなら遅延評価では、(再帰であってもなくても)末尾呼び出しは単なるジャンプになるから、スタックを使わないのである。スタックに戻る場所を積むのは、case と of の中で評価される式だけだ。(つまり、ここは正格に評価される。) この問題を解決するために GHC 7.4.2 から、わざわざスタックにログを残して、スタックトレースが取れるようになった。すなわち、最新の Haskell Platform をインストールしていれば、この機能を使えるということだ。 例として、以下のプログラムを考えよう。 module Main where main :: IO () main = print $ foo 3 + 1 foo :: Int -> Int foo x = x * 2 + bar x bar :: In

    GHC でスタックトレース - あどけない話
  • Haskellの単体テスト最前線 - あどけない話

    この記事の最新版は、githubで管理されています。 これはHaskell Advent Calendar 2012の5日目の記事です。 Haskellで作成したパッケージに対して、単体テストを書くための最新情報をお届けします。 要約 要点は4つです。 利用者に見せたい振る舞いは、doctest で書く 利用者に見せたくない振る舞いは、hspec で書く テストを自動化するフレームワークとしては Cabal を使う doctest でも hspec でも、純粋なコードに対しては、できるだけ QuickCheck などの性質テストを書く この記事で一番伝えたいのは、3) です。例題としては、Base64 という符号化を取り上げます。Base64 は知っていると仮定して話を進めますので、知らない人はあらかじめ Wikipedia の Base64 の説明でも読んで下さい。 この記事で利用するコ

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  • 型クラスとモナドと Free モナド - あどけない話

    要約:Free モナドは何が嬉しいのかを議論するためのたたき台。以下の2つの論文に載っている例を3つの方法で実装する。 Janis Voigtlander, "Asymptotic Improvement of Computations over Free Monads" Wouter Swierstra and Thorsten Altenkirch, "Beauty in the Beast -- A Functional Semantics for the Awkward Squad" モナド 最近、僕はモナドを次のように説明するようにしている。「モナドとは言語内DSLを実装するための API (あるいはフレームワーク)」 だから、何か言語内DSLを作るなら、それをモナドのインスタンスにすべきだ。ここでは、getChar と putChar という API を持つ簡単な DSL を考

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  • なぜ Haskell ではキューが軽んじられているか? - あどけない話

    Haskell ではキューが欲しくなったら Data.Sequence を使えと言われる。Seq は両端キューだし、シーケンスとして使えば、連結(><)や分割(splitAt)が、ならし計算量で O(log N) という優れものである。しかし、内部がfinger treeなのでコードが複雑なのと、計算量が「ならし」なところが玉に傷である。 もっと単純で、最悪計算量を保証する(両端でない)キューが標準で提供されてもいい気がする。その候補には、リアルタイムキューがある。どうして標準でキューが提供されないのだろう? 僕なりの答えは「需要がない」だ。 問題を解くときにスタックはよく使うが、キューが必要な問題はそんなに思いつかない。僕はネットワーク屋なので、もちろんルータにはキューが必要なことは知っているが、それ以外で有名どころと言えば幅優先探索ぐらいだ。 幅優先探索 でも、Haskellではキュー

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  • STMで解く「食事する哲学者の問題」 - あどけない話

    Haskell で STM を使えばデッドロックがなくなる例として、事する哲学者の問題を考えてみる。 デッドロックするコード 事する哲学者の問題では、箸がロックの役割を果たす。Haskell の軽量スレッド間でロックを取るには、MVar を使えばよい。以下のコードを走らせると、その内デッドロックする。 module Main where import Control.Monad import Control.Concurrent import System.Random numOfPhilosopher :: Int numOfPhilosopher = 5 type Chopstick = MVar () newChopstick :: IO Chopstick newChopstick = newMVar () getChopstick :: Chopstick -> IO ()

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  • Haskellの配列でクイックソート - あどけない話

    Haskell の クイックソート としては、以下のようなコードがよく例に出てきます。 quickSortList :: [a] -> [a] quickSortList [] = [] quickSortList (x:xs) = quickSortList lt ++ [x] ++ quickSortList gt where lt = filter (<x) xs gt = filter (>=x) xs これは、小さなリストを何度も連結するので、効率が悪そうです。 そこで、一旦配列に直し、固定領域を使ってソートして、またリストに戻す方がいいのではないかと思い、実装して速度を比べてみました。配列を使うクイックソートのコードは、「珠玉のプログラミング」から拝借しました。ベンチマークも含むコードは、gist に上げています。 結果はこんな感じ(単位はms): 入力のサイズ 10^4 10

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  • Haskell での例外処理 - あどけない話

    リツイート数が30を超えたので、Haskell での例外処理について説明します。僕が思うに、Haskell での例外処理が分かりにくいのには、2つ理由があります。 ライブラリの混乱 パラダイムの違い 歴史的経緯により、Prelude にも Control.OldException にも Control.Exception にも catch があります。歴史的経緯を説明するのは面倒なので、これだけ覚えて下さい。「Control.Exception だけを使って、それ以外は忘れる」 そもそも純粋関数型で catch とか言われても分からないかもしれません。Haskell では、純粋な関数と IO とでは、例外処理の方法が異なります。命令的な catch などを使うのは IO です。純粋な関数には Maybe か、Either を使います。 純粋な関数 純粋な関数では、原則として例外を投げてはい

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  • すごいHaskellたのしく学ぼう! - あどけない話

    ゾウこと「Learn You a Haskell for Great Good!」の訳が、ついに発売されます。 Learn You a Haskell for Great Good!: A Beginner's Guide 作者: Miran Lipovaca出版社/メーカー: No Starch Press発売日: 2011/04/15メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 1,024回この商品を含むブログ (7件) を見る 訳のタイトルは、「すごいHaskellたのしく学ぼう!」です。 すごいHaskellたのしく学ぼう! 作者: Miran Lipovača,田中英行,村主崇行出版社/メーカー: オーム社発売日: 2012/05/23メディア: 単行(ソフトカバー)購入: 25人 クリック: 580回この商品を含むブログ (73件) を見る すごいタイトルですね!

    すごいHaskellたのしく学ぼう! - あどけない話
  • Yesod の設定 - あどけない話

    web アプリのき開発中はローカルホストで検証し、実際のサービスはリバースプロキシの後ろで運用する方法は、たったこれだけ: yesod init する config/settings.yml を適切に変更 yesod init すると、Foundation.hs に以下のようなコードがある。 instance Yesod Sample where approot = ApprootMaster $ appRoot . settings これは、config/settings.yml からよしなにドキュメントルートを決めてくれるという意味。このファイルは、例えば以下のように書く。 Default: &defaults host: "127.0.0.1" port: 3000 copyright: Copyright (C) 2011 Kazu Yamamoto Development: <こ

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  • HaskellとテストとBDD - あどけない話

    Haskellでの BDD を実践するとどうなるかを考えるためのメモ。 型 豊かなデータ型とセクシーな型システムを持つ Haskell では、型が以下のような意味を持つ。 仕様 保守性の向上 簡単なドキュメント 設計図 BDD では、テストの用語ではなく設計の用語を使ってテストを記述する。だから Haskell で、まず型を書く習慣があれば、ある意味 BDD を実践していると言える。この感覚は、他の言語のプログラマには分からないかもしれない。 fromList :: Ord a => [a] -> Set a fromList = undefined このコードはコンパイルを通過するので、型に関する誤りがないことを確かめられる。 僕はへなちょこなので、型を先に書くこともあれば、後から書くこともある。 単純なコードはさっさと実装したい 型は GHC に推測させて、ghc-mod で自動挿入す

    HaskellとテストとBDD - あどけない話
  • 右も左も分かる再帰 - あどけない話

    「函数プログラミングの集い」のチュートリアル資料を作成するためのメモ。リストに対する再帰を2つに分類することで理解する。 再帰 関数プログラミングでは、繰り返しを再帰で実現する。入力がリストである関数を実装するとする。この種の関数は、出力の種類により以下の2つに分類できる。 同じ順番のリストを作る 数値などを作る。あるいは逆順のリストを作る。 リストからリストを作る再帰 例として、(++)、concat、map、filter の利用例と実装を示す。 (++) (++) は連結(append)関数。 [1,2] ++ [3,4,5] → [1,2,3,4,5] 実装はこう。 (++) :: [a] -> [a] -> [a] (++) [] ys = ys (++) (x:xs) ys = x : (xs ++ ys) concat concat は、リストのリストをリストに平坦化する。 c

    右も左も分かる再帰 - あどけない話