2012/9/219:0 歴史の証言者たち――日本の『制度』をささえた人びと〈3〉堀利和〜憲政史上初の、盲人の国会議員〜 大野更紗 (*本稿では、現在「差別用語」とされている表現を、資料・記録の記述に即し、変更をせずに使用しています) 瞼を閉じて、右手をもらったばかりの名刺の上にかざす。「堀利和(ほり としかず)」と印刷してある文字のうえに、点字の突起。 -このポツポツ、堀さんの『堀』はどの部分が『堀』なんですか全盲の翁に、目が見えるものが赤子のような質問をする。堀さんは、まるで「見えている」かのように、机の上に置いた名刺の、その紙の上のさらに小さな突起を指さしながら、解説して下さる。「これだよ、この2つかたまっているのが。ここが『ホ』・『リ』」 -ん? どこですか?「『ズ』が難しいんです。単なる50音は1マスでいいんだけど、濁音は、2マスぶんを使います」人差し指の先端に全神経を集中して、