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ブックマーク / www.ebook2forum.com (25)

  • 「電書1兆円」は正夢:(5)市場は意味から生まれる

    先月は、今月に3周年を迎えたMagazine の改修で Forumのほうは手を抜いてしまった。書きたいテーマは山ほどあり、やらねばならぬことも多いので、そろそろとリスタートしたい。まずは、5月に手をつけた「電書1兆円」連載から。今回は「物理的世界のとサイバー空間のコンテンツの区別と連関」とでも言おうか。いちばん説明に苦労する部分。 「デジタル1兆円」には“デジタル・ファースト” かなり間が空いたので、これまで書いたことを確認しておきたい。 出版市場が縮小する理由はなく、「失われた15年間」となった理由は、社会の変化に対応しようとしない出版業界の側にある。アマゾンの「一人勝ち」は、その証明である。 書籍と雑誌を両輪として成立してきた日の出版産業の再建は、インターネット時代の知識・情報空間(メディア秩序)の中での両者の位置づけの再定義が避けて通れない。 「1兆円戦略」は雑誌ビジネスの再構築

  • 海賊取締の暴走でフィンランドが著作権法審議へ – EBook2.0 Magazine

    フィンランドでは最近の憲法改正により、国民投票を通じて市民が議会に法案を提出する権利を認めているが、7月23日、著作権法の適用緩和を求める立法提案が「6ヵ月以内に5万人」という条件をクリアしたことが伝えられた。こうしたイニシアティブとしては世界初。メディア業界のロビイストの世界的活動によって一直線に「強化」に突き進んできた流れを逆転させる契機になるかどうかが注目される。 誰のため、何のための取締か 「著作権における良識」法案と名付けられた提案は、期限の1日前、5万3,169の支持を集めて採択された。草案は、違反に対する罰則の緩和、公正利用の拡大、不公正な契約の禁止、バックアップやタイムシフト保存の合法化、などを明記している。 この提案は昨年11月、違法コピー取締団体 CIAPC の告発によって警察が9歳の女児の自宅を家宅捜索し、「犯行」に使用された『クマのプーさん』のラップトップPCを押収

  • 「著作権は何のためにあるのか」の研究 – EBook2.0 Magazine

    イリノイ大学ロー・スクールのポール・ヒールド教授が最近発表した統計的研究(→PDF)によれば、著作権は著作の入手を困難にし、パブリックドメインはその逆に働くことが明らかになった。ISBNでアマゾン・ストアからランダムに抽出した7,000点をサンプルに発行年で整理し、ランク付けした。1923年以前の著作権切れ以前のものに比べ、「保護」されているものほど入手は困難になっている。データによって、現行著作権が知的遺産へのアクセスを阻害していることは明らかだ。著作権はカネのことしか考えていない。 金にならない大部分のコンテンツを消し去る Amazon.comで販売されている書籍をランダムに標化したところ、1850年代に初版が刊行された書籍は、1950年代のものの3倍に達した、という発見は、著作権が著作物の消滅・死蔵を増やす方向に作用していることを示すものだ。版権切れの書籍は現在もなお商品であって、

  • 「電書1兆円」は正夢? (4):本はコモディティか

    これまでの出版界では、の売り方を真剣に考える習慣がなかった。どうにもならないと考えられてきたからだ。米国の5年間で出版社が学んだことは、は映像やゲームなどと伍してやれる強いメディアであること、その強さは人ととの出会い(体験)によってのみ生まれること、そして読者に目を向けることでに最適化したマーケティングが可能になることだった。 ガジェットではなく、好きが市場を動かす 米国のE-Book市場が5年間で30億ドル(約3,000億円))を超えるまでになりながら、それが印刷市場に影響を与えることなく、追加分として出版社にプレゼントされたという事実は、その反対のことを言い続けてきた業界とメディア関係者の気恥ずかしさのせいか、表立って分析対象となっていない、おかげで日ではまだ事実としてさえ受け入れられていない。30億ドルもの市場は、どこから、どうやって生まれたのか、暫定的な回答を得た米英

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    copyright 2013/07/02
    「図書館が重要なのは、公共の負担で「読者」を育ててくれるからだ。海賊版もまた(自分で買ってくれる)読者の育成には役に立つ。」
  • 「電書1兆円」は正夢か? (3):書籍・雑誌一体改革

    書籍市場が伸びるには、活字エコシステムにおける雑誌との連携を欠かすことは出来ないが、その雑誌はいま危機的な状態にある。出版社が書籍と雑誌も兼営する日的出版のモデルは、21世紀にも適応可能だが、マーケティング的な意味で兼営のメリットが生まれるのは、現在の書店流通の上ではなく、デジタルコンテンツ/サービスとしてということになる。現在の書店流通は、書籍とその読者にとって機能していない。「1兆円戦略」には雑誌を含めたエコシステムの再構築が不可欠だ。 が売れるには雑誌が必要 前回、書籍で1兆円の恢復は、流通上のネックさえ解決すれば十分に現実的であること、「活字離れ」 (≒消費者が悪い!)は出版人の責任放棄であることを述べた。そこで、個別の分野ごとに成長余地を示し、課題を提起したいと思ったのだが、その前に「流通上のネック」つまり出版インフラにおける構造問題について述べておく必要があると思われる。そ

  • 著作権改革のためのフレームワーク [翻訳]

    著作権に関する議論は、どこか胡散臭い。5Wのコンテクストが外され、ただ「拡張と延長」そして「取締強化」にだけ誘導されているのだ。仮面を外した実際の顔を知ることが、誰にとっても重要になってきた。そこで、まず米国の有力な技術系ブログメディアTechdirtのマイク・マスニック編集長の了解を得て、最近米国での著作権改革について書いた論文を翻訳・掲載する。解説は別に書きたいと思うが、まずは著作権がいかに(国際的に)誤解・曲解されているかを知っていただければ幸いである。(鎌田) 「著作権改革のためのフレームワーク」 マイク・マスニック(Techdirt編集長) A Framework For Copyright Reform, by Mike Masnick, Techdirt, 05/17/2013 下院の知的所有権小委員会の著作権改革に関する第1回公聴会を大部分見ていたが、やや失望感が残った。パ

  • 出版デジタル機構がモンスターになる日

    出版デジタル機構が、電子出版の取次「大手」ビットウェイを買収したことについて、岸 博幸教授(慶應大学・大学院メディアデザイン研究科)が「出版デジタル機構の電子書籍取次買収は最悪の愚策」と断じている。(1)民業圧迫、(2)モラルハザード、という明快な根拠は十分すぎる説得力があり、その通りだと思う。関係者も沈黙するほかないだろう。 しかしこうすることが暗黙の既定方針だった可能性はかなり高い。でなければ、疑問と批判に答え、経緯を説明していただきたい。このままでは「1兆円」が永久に遠ざかってしまう。 奈落への道は補助金で敷き詰められている 岸教授が、“非競争領域”から“競争領域”に事業を拡大させたことを批判しているように、取次は純然たる競争領域だ。ビットウェイの買収は、JAL支援どころではない民業圧迫/介入であり、後述するように、機構の存在が拡大すれば、合法的なものであっても非関税障壁(自由貿易違

  • 書評:出版未来派のデジタル革命宣言

    の未来」について、この数年さまざまに語られている。いやコンピュータが登場して数十年、語られ続けてきた。うんざりだろう。しかし、幸いにも書は「の未来」を語ったものではない。著者たちは実践的立場からこの「未来」に関わってきており、書は、出版という場で「未来」を現在として創ってきたテクノロジストのマニフェストだからだ。多くはE-Book2.0 Magazineでおなじみの顔ぶれだ。ということで、情報は非常に豊富で、筆者にとっては斜め読みにするわけにはいかない。(ヒュー・マクガイア、ブライアン・オレアリ編著『マニフェスト-の未来』、ボイジャー刊、2013年2月) 未来とは予測ではなく実践である ひと通り紹介をしておこう。書(原著は2012年1月)はデジタル出版ビジネスの第一線で活躍するヒュー・マクガイア(写真左)、ブライアン・オレアリ(右)の両氏が、その最前線で様々な課題に取り組んで

  • 出版マーケティング再考(2):流行と不易―モノからヒトへ

  • 出版マーケティング再考(1):なぜいま?

    オープン・パブリッシング・フォーラム(電子出版再構築研究会)第1期(7-9月)は、まずマーケティングからスタートする(7/25)。デジタル出版はコンテンツではなくマーケティングによって成立し、これを制するものが市場を制する。マーケティングは釣りやスポーツ、ゲームのようなものだ。「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」(論語) とはいえ、わず嫌いな人も多いので、まず知るところから始めよう。 E-Book2.0 Forumではこれまで様々な角度からマーケティングを扱ってきたが、いま読み返してみると、外れてはいないつもりだが、断片的で要点しか書いていないものが多い(例えばこの記事)。筆者は米国流マーケティングを前提に発想するのだが、これはいまもって日ではあまり実践されているとはいえない。21世紀に入って登場したWebマーケティングは筆者も断片的にしか知ら

  • 尻に火がついた!:2012年の日本E-Book市場 [寄稿]

    市場についての鋭い観察を欧米のメディアに提供しているロビン・バートルさんがPublishingPerspectivesに書いた最新記事の翻訳版をお届けする。原題の”When Push Comes to Shove”は、ロック・ファンにはおなじみの文句だが、どうにも訳しにくい。楽天/KoboとKindleによって、対岸の火事の火の粉が降りかかり、とうとう…という語感か。記事は、しかし現状分析に止まらず、日の出版社、あるいは出版を志す人々に必須と思われる4つの建設的提言を行っている。(鎌田解題) とうとう尻に火がついた!:2012年の日E-Book市場 ロビン・バートル(サッカム・プレス) [寄稿] 楽天/Koboがシアトルの巨人を動かした 2011年の日のE-Book売上の大部分はマンガだった。これが出版市場の主流に座を占めるのに、ごくわずかな有力企業からの強いひと押しを待つとい

  • オープン・パブリッシングのビジョン:(4) 21世紀の出版編集技術

    オープン・パブリッシングは、サービス指向ITを「出版」のバリューチェーンに効果的に組み込むことでその可能性を最大化させるコンセプトだ。それは出版の社会的機能を、デジタル革命という歴史的転換に対応するように再構築する試みでもある。多様なコンテンツとサービスの協調環境のためのマッピングを行うが、それを機能させるのは人間だ。21世紀のプロのための編集出版技術を再定義し、スキル/メチエを拡げ、高め、評価を得るための仕組みが必要になる。ITに置き換えられない、「人間のコアコンピタンス」を明確にできなければ、出版は仕事にはならないからだ。 コンテンツとテクノロジー/サービスのマッピング 1940年代に遡るデジタル革命は、情報処理のデジタル化と情報そのもののデジタル化という2つの経路で進行してきた。出版に関して言えば、前者は主として販売管理、後者は組版処理としてスタートし、それぞれ半世紀もの歴史がある。

  • オープン・パブリッシングのビジョン:(2)出版経営とテクノロジー

  • オープン・パブリッシングのビジョンに向けて(1)

    Forumを中心とした活動も、ほぼ3年を経過しようとしている。デジタル時代の出版ビジョンを考え、提案し、実践しようという構想で始めたのだが、そろそろ締切りがきた。ITの世界に長くいて、テクノロジーとビジネスの噛み合わせの難しさは嫌になるほど体験したが、出版がIT業界より救いがあるのは、多くの人々に創造やコミュニケーションにおける活躍の場が与えられるということ。1980年代でビジネスモデルの進化が止まった日ITに比べ、出版は無限に近いほどの可能性を秘めた、これからの産業だ。 「電子書籍元年」から3年余り経った。いっこうに離陸もしないがブームのように終息もしないところが、出版のデジタル化の重さと深さを示している。なぜ前進しないのか。多くの人が、まだこれをスクリーンでを読むことだと考えているからだ。とくに「活字媒体」を神聖視する人々は、頑なに別の見方を拒否している。活字の神聖視は、軽視より

  • 出版の世界市場の成立と日本

    これまで出版が国境を越えるには3つの壁があった。言語/文化、販路、そして出版活動の一切に要するオーバーヘッド・コストだ。これらの壁(リスク)を越えるには、一般的に言って出版社は小さすぎ、出版物は多様すぎる。しかし、その割には、壁を越えた多くの出版物が流入し、その中には成功した出版物が少なくないことは、需要が確かに存在すること、壁が低くなればその分、あるいはそれ以上に市場が拡大する余地があることを示している。そして壁は低くなった。その結果どうなるか。 障壁は消え、日の巨大な「外国書籍市場」が世界市場につながる 一般書籍と学術書、雑誌を含めた日海外文献市場は1,000億円あまりと言われ、オンライン・コンテンツを含めれば決して小さくはない。それにかつてほど活発ではなくなったが、翻訳書出版は書籍市場の1割近くを占める。ジャンルによっては30~50%ということもある。世界的に見ても突出している

  • Kindle狂想曲のクライマックス

    Kindle上陸」が主要日刊紙で間歇的しかし大々的に報じられるようになって半年あまり。確定的な報道のはずが、いずれもほどなく噂にまで格下げされている。噂にもいろいろあるが、米国のネイト・ホフェルダー氏は、この噂をユニコーン(想像上の獣)として扱い、バウカー社の調査を引用して、日人はE-Bookなど要らないようだから、アマゾンも無駄なカネを使わないほうがいい、とまで言っている(The Digital reader, 04/18)。じっさい。これは異常な事態である。 新聞はそれなりの裏を取って報じたのだろう。どこか(この場合はアマゾン)に頼まれて、言われる通りに書いたという可能性は考えられない。それでは、日経、読売、朝日などの各紙が、揃いも揃ってハズしてしまうという事態が生じたのだろうか。関係者が数十にも達するようなのに、こうも空気が重苦しいのはなぜなのか。 見苦しい出版業界のラインダンス

  • 東北を遥か離れて:電子化事業への5つの疑問

    大震災から1周年。東北に少なからず縁のある者として、その復興には強い関心がある。そして出版のデジタル化にはこの3年ほど、それなりに取り組んできた。しかしこの2つを結びつけた今回の「緊急」事業には、残念ながら筆者の理解と想像力を超えたところがある。オープンに議論が交わされた形跡を発見できないのも気になる。どなたか、以下の疑問を氷解させ、愚問であったことを教えていただけることを期待したい。 第1の疑問:東北復興の「緊急」事業なのか 東北復興予算の趣旨は、地域圏の産業・社会基盤を再建することで、産業・社会・文化活動の自律性、持続性の回復を支援することであると理解される。それと書籍の電子化とがどう関係するのだろうか。雇用創出というのならば、どのような技術を使い、どのくらいの雇用を、どこで創出するかが問題だ。東北の出版社、印刷会社、書店、図書館、そして読者たる一般市民にどのような利益がもたらされるの

  • 米国にもある“自炊代行”:Bound Book Scanning – EBook2.0 Magazine

    電子版が入手できないをデジタル化してE-Readerで読みたいというニーズは普遍的なもので、「自炊代行」はどこにでもあるはずと考えているが、ニューヨーク州エアマウント市にあるBound Book Scanning (BBS)は、一般消費者向けに非破壊型(non-destructive)スキャニング(画像PDF)とOCRを使った編集可能ファイル(Word/TXT/RTF)、オーディオファイル作成までを行う。2010年に創業した新興ビジネスだ。 現在、有償で100万点、無償は200万点ほどがE-Bookとして営利/非営利サービスで提供されているが、もちろんこれはこれまでに蓄積された膨大な刊行書籍の一部に過ぎない。BBSは、そうした“未電子化”を対象に、主に個人が所蔵するのコンテンツを電子ファイルに変換して提供するサービスだ。業務用ではなく個人用にフォーカスしたスキャン代行はそう多くないよ

  • Kindle年内日本開店を見送り、来春以降へ延期 – EBook2.0 Magazine

    共同通信英語版は12月27日、アマゾンが日でのKindleストアの年内開設を断念し、来春に延期したと報じた(以下英文毎日の記事による)。業界関係者によれば、小売価格の決定権を巡る出版社との交渉が難航しているのが理由という。現状では十分な日語タイトルを揃えられず、来年春が次のターゲットとなるようだが、“原理的対立”があるとすれば、決着はさらに延びる可能性もある。出版社にとって、時間が無限にあるわけではない。相手のほうが選択肢が多いからだ。 日で「最大の書店」としての存在感を発揮しているアマゾンは、E-Bookについても1年以上前から交渉を始めているが、今年も空振りになることがはっきりした。アップルiBooks、Googleもまだ参入しておらず、ガラパゴス状態は続く。 紙と電子のリンケージは不合理である 記事によると、アマゾンは、出版社が求める「固定価格による委託販売制」ではなく、「書店

  • カナダの作家団体が「権利章典」で印税50%要求

    カナダ著作家協会(The Writers Union of Canada=TWUC)は、デジタル時代における基的な要求を12項目の「デジタル時代の著作家の権利章典」(PDF)としてまとめ、出版社に配布した。これまでのところ回答やコメントはないという。カナダではエージェントを利用する作家は2割ほどしかおらず、TWUCはこの「権利」を出版契約書に盛り込もうとしているようだ。論議を呼びそうなのは「印税50%」というところだろう。 以下はTWUCのテキストからの仮訳である。なお公共貸与権委員会という聞き慣れない用語が出てくるが、欧州諸国の多くやカナダでは図書館における著作物の貸出しに対する補償を著者に対して実施する制度を導入・実施しており、これを管理する委員会が設置されている。 著作権法は、権利保有者に知的所有権の保護と適切な報酬を保証するものでなければならない。 著作権への例外は最小限で無けれ