「史上空前」の連続 「藤井君は、羽生さんを超えられますか?」 「藤井君は、AI(人工知能)に勝てますか?」 「史上空前」とも称される将棋ブームの中にあって、この1年ほどの間、筆者が繰り返し尋ねられてきた質問である。これこそがまさに将棋に興味を持つ人々の関心を集約した問いだろう。 「空前」という言葉は、以前に先例がない、ということを意味する。 現在の日本の将棋は、400年の歴史を誇る。歳々年々、数え切れないほど多くの人々が、この世界一面白いゲームに親しみ、遊んできた。その間、9×9のます目の将棋盤の上では、40枚の駒によって、万華鏡のように数え切れないほどの局面が生じた。盤上も盤外も、つねに新しい何かが起こる。それが将棋界というところである。 長い歴史の間に幾人かの天才が現れ、盤上、盤外で鮮烈な印象を残すとともに、数々の大記録が打ち立てられた。それでも、めったなことでは「史上空前」ということ