本書は、Dennis Tourish, Management Studies in Crisis: Fraud, Deception and Meaningless Research, Cambridge University Press, 2019 の全訳である。 本書には、経営学という学問領域が今まさに直面している危機の諸相が、研究の質とインテグリティ(倫理的な一貫性や誠実性。訳語解説参照)、大学における研究・教育体制、学問と実社会との関係など多岐にわたる問題との関連で余すところなく描き出されている。ただし、本書は単なる「批判のための批判」などではない。著者のトゥーリッシュ教授は、経営学の再生の可能性を見すえた上で、さまざまな改善策を本書の各所で提案しているのである(そのような改善提案が盛り込まれた、本書の第6章と同じタイトルを持つ論文「経営研究におけるナンセンスの勝利」は、2020年