『もう「はい」としか言えない』(松尾スズキ/文藝春秋) 先ごろ、第159回芥川賞の候補作が発表された。松尾スズキさんが『文學界』(2018年3月号)に発表した『もう「はい」としか言えない』がノミネートされている。 松尾さんが劇団「大人計画」を旗揚げして、今年でちょうど30年。芥川賞は3度目のノミネート。選考会は7月18日で、それに先駆けて単行本『もう「はい」としか言えない』(文藝春秋)が刊行された。ユーモラスで、ちょっとシュール。どこか情けなさも漂って、松尾さんならではの味わいが凝縮されているのだ。 2度目の結婚生活を送る劇作家・俳優の海馬五郎は、平穏な日々を送っていたつもりだったのだが……。ある日、自分の浮気がばれていることを知った。静かに怒りをたぎらせる妻は、土下座する海馬にむかって「事務所を解約すること」「1時間ごとに背景を含めた写メを送ること」「毎日セックスすること」の3条件を課し
『本田鹿の子の本棚』(佐藤将/リイド社) 本棚には、その人の趣味嗜好が表れます。なかには、本棚を見られるほうが日記を見られるよりも恥ずかしい、と感じる人もいるはず……。 現在、無料マンガサイト「リイドカフェ」で連載中の『本田鹿の子の本棚』(佐藤将)は、ある少女の本棚に並ぶ“本”が主役の作品です。 思春期真っ盛りの娘、鹿の子との会話が減り、娘が何を考えているのかわからない、と悩んでいた父・本田鳩作。そんなある日、仕事からちょっと早く帰宅した鳩作は、娘の部屋に侵入し「娘のことを知る手がかりになるかもしれない」「他人の本棚を見るのは その人のプロファイリングになるという」と言い訳をしながら、禁断の本棚に手を伸ばし、衝撃を受けます。 なんと、その本棚に収められていたのは、どれもこれもあれもそれも奇妙奇天烈摩訶不思議な「暗黒文学」ばかりだったのです……。 タイマーで目を覚ますだけでなく、持ち主の貞操
西内まりやが主役を演じたことでも話題となった『スイッチガール!!』(あいだ夏波/集英社)は、メイクも服もバッチリで男にも超モテモテなカリスマギャルの仁香が主人公。キラキラ女子の代表として誰からも羨望の目で見られる仁香だが、その本性はオヤジ。仁香は自分の中でオンモードのスイッチを切り、オフモードとなると干物を好み、ダサいコーデでグータラ生活を楽しむのである。だが、オフモードの時に出会った転校生・神山の登場によって、仁香の人生は大きく変わっていく。人は友達や彼氏の前では自然とオンモードになってしまうものだが、本作はオフモードを見せることで得られるものだってあるのかもしれないと気づかせてもくれるはずだ。 ■片思い相手のコピーを振り向かせるSF×ラブコメ漫画 SF要素が詰まったラブコメが好きな方は『ウワガキ』(八十八 良/エンターブレイン)で、新感覚な恋愛模様を楽しんでみよう。物語の主人公は、冴え
2018年7月8日(日)に、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の第15話が放送された。美しさを求める少女に驚きの結末が訪れ、「こんなやるせないオチになるとは」「女心の真理を突いてる」と話題になっている。 今回登場したのは、「ずんべら」という美しい女性の姿の妖怪。ずんべらは自分の顔が醜いことで悩んでいる少女・きららに声をかけ、自分の顔を死人の顔と入れ替える“霊形手術”を施してきららを美少女に変身させた。 きららは普段から好んで可愛い洋服を着ているが、学校では顔について悪口を言われるばかり。大好きな俳優のユウスケ君を追っかけている時も、他の女子に押しのけられてユウスケ君に近づくことも出来ない。だが新しい顔に生まれ変わってからは、“ブス”と呼ばれないどころか男の子から声をかけられるほどモテモテに。意気揚々とユウスケ君に会いに行くと、ユウスケ君は一目で彼女がきららであることを見抜いた。 一方ずんべらが人間の
トップレビュー赤い糸で結ばれたと思っていた夫は、若い男と結ばれていた!? 『たそがれたかこ』の入江喜和が見せる女の生き様 『ゆりあ先生の赤い糸』(入江喜和/講談社) 〈少女のころ夢見た赤い糸は実は蜘蛛の糸のように互いをしめつけあうモノ――かもしれない〉。と、やや不穏なモノローグで幕を開ける『ゆりあ先生の赤い糸』(講談社)。著者は『このマンガがすごい!2018』(宝島社)で4位にランクインした『たそがれたかこ』の入江喜和。衝撃的なラストで読者の胸をえぐっただけに、本作もただ、ふんわり運命の人を夢見るだけの物語であるはずがない。穏やかに、けれど研ぎ澄まされた棘の気配が、第1巻から漂っている。 主人公のゆりあ先生こと長田ゆりあは、幼いころから女らしさとは無縁。彫りの深い顔立ちは男らしく、背は高く手足もがっしり。幼いころから“女くさい女”だった3歳年上の姉とは対照的で、あだ名も“おっさん”。性格は
『隠れアスペルガーさんの才能・仕事の見つけ方』(吉濱ツトム:著、いしいまき:マンガ/宝島社) コミュ障という言葉が一般化されて久しい。他者とうまくコミュニケーションが図れない、対人関係においてトラブルばかり起きてしまう……。それらの悩みをコミュ障という言葉に置き換え、自身をそう称する人も少なくない。しかし、そんな人たちのなかには、「隠れアスペルガー症候群」の人がいるかもしれないという。 このアスペルガー症候群とは、発達障害の一種。コミュニケーション能力に難点を抱えており、それゆえに、社会的に孤立してしまったり人間関係をうまく築くことができなかったりしがち。しかし、コミュ障という言葉の台頭により、なんとなくそれらが「個人の努力不足」や「ワガママ」として捉えられてしまう場面も少なくない。本来であれば、その症状を正確に理解し、向き合っていく必要があるにもかかわらず、だ。 そこで登場したのが、『隠
愛と呪い。本作のタイトルは、まさに愛子の状況そのものを示している。父親からの過剰なスキンシップや祖母による信仰の強制は、もしかしたら形を変えた愛情だったのかもしれない。しかし、当の愛子にとっては、それは呪い以外のなにものでもない。どこにも逃げ場のない子どもからすれば、苦痛でしかない愛なんて、自分を縛り付けるただの呪いだ。 そんな愛子は、やがて実在するひとりの犯罪者に、不思議なシンパシーを覚えるようになる。それが神戸連続児童殺傷事件を起こした「酒鬼薔薇聖斗」である。本作には彼の犯行声明文が印象的な形で登場し、愛子の心境とリンクしていく。誰も私を助けてくれないのなら、全部殺してほしい。醜い“私自身”も含めて……。 ひとりの少女がそこまで追い詰められていく過程からは、思わず目を背けたくなるかもしれない。本作の物語はまだはじまったばかり。この先、愛子がどのような道を歩んでいくのかはわからない。ただ
本谷有希子の小説『生きてるだけで、愛。』の実写映画が、2018年11月9日(金)に公開される。特報やティザービジュアルも公開され、「菅田将暉というだけで期待値が高い」「世界観が原作そのままで楽しみ!」と話題だ。 主人公の寧子はうつ病や過眠症に悩まされており、毎日引きこもりがちな生活。恋人の津奈木とは同棲して3年になるが、津奈木は自分をコントロールできず暴走する寧子を怒ることも責めることもなく寄り添っていた。しかし、2人のもとに津奈木の元恋人が現れ、それまでの関係は一変。元恋人は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るのだった―。 映画で寧子を演じるのは、映画「勝手にふるえてろ」やドラマ「ブラックペアン」で注目を集めた女優・趣里。津奈木役には今最も勢いのある俳優・菅田将暉がキャスティングされ、監督は同作が長編監督デビューとなる関根光才が務めることが明かされた。 特報動画では、シンガーソングライタ
『ルポ 保育格差』(小林美希/岩波書店) 「保育園落ちた日本死ね!!!」―2年前、日本に衝撃を走らせたブログのタイトルだ。このブログを機に、一億総活躍社会を旗印に子育て支援に取り組む日本政府の姿勢が改めて問われることとなった。この言葉が話題を呼んでから2年がたつことは先述の通りだが、その間に行政は急ピッチで保育所の増設を進めてきた。待機児童は一部の自治体では徐々に減りつつあるものの、一方で新たな問題が湧き出てきたのもまた事実だ。保育士が全然足りないのである。これを解消しようと大量の保育士を確保したのはいいものの、経験の浅い若手保育士があふれ、保育所での保育の質の悪さが目立ってきている。 本稿では、待機児童問題や保育士の処遇問題、そこから生じる保育所での保育の質の問題などさまざまな角度から日本の子育て支援の在り方に迫る『ルポ 保育格差』(小林美希/岩波書店)に基づいて、日本の保育所問題の諸相
20世紀を代表する芸術家、イサム・ノグチ(1904~1988年)は、詩人・野口米次郎とアメリカ人の母・レオニー・ギルモアのもとに生まれ、世界文化を横断しながら生き、彫刻をはじめ、舞台美術や家具、プロダクトのデザイン、陶芸やドローイングから、大きい作品では庭園やランドスケープの設計まで、幅広い巨人的な制作を精力的に行ったアーティストだ。 アメリカ・ロサンゼルスで生まれ、幼少期より幾度も日本との往復を繰り返した世界市民としての生い立ちや、女優・山口淑子(李香蘭)との結婚生活、また岡本太郎、丹下健三、北大路魯山人、谷口吉郎、フランク・ロイド・ライト、フリーダ・カーロといった錚々たる著名人との交友関係については、彼の生涯をつぶさに追ったテレビ番組などを通じて見聞きした人も多いかもしれない。 また、現在もデザイン系グッズを取り扱うインテリア店やミュージアムショップなどで購入することができる有名な提灯
『終わらない恋のはじめ方』(萩中ユウ/WAVE出版) 過去に痛い失恋や悲しい別れを経験した人ほど、「永遠に終わらない恋がしたい」と強く思ってしまうものだ。しかし、そうは思っても、気が付けばまた自分だけが苦しむような恋を繰り返してしまっている方も多いのではないだろうか。 そんな悲しい恋愛から脱却したい方のバイブルとなってくれるのが、『終わらない恋のはじめ方』(萩中ユウ/WAVE出版)だ。本書では、愛妻コンサルタントである萩中ユウ氏がさまざまな恋愛の悩みに解決法を与えている。辛い片思いをしている。結婚できずに焦っている。夫との関係がうまく築けない。こうした悩みを抱いている方は本書で、自分の中に根付いてしまっている価値観や考え方を変えていこう。恋の結末は自分の手でどうとでも作っていくことができるのだ。 ■「不幸の先取り」をしていると恋は終わる 大好きな人と付き合うと、恋愛の悩みはむしろ増えていく
自分よりも学校の成績がいい 自分よりも記憶力がずば抜けている 自分よりも柔軟なアイデアを次々に生み出す そういった人が現れると、「自分とは頭の出来が違うんだ…」とあきらめてしまいがち。だが中には、そんな才能あふれる人たちに負けまいと日々勉強や脳トレに励んでいるという人もいるだろう。 脳は絶えず変化し、今この瞬間も脳細胞が誕生・死滅を繰り返している。それは、さながら「固まることのない粘土」のよう。つまり、脳の性能の良し悪しは生まれ持って定められているわけでなく、アップグレードさせることができるということだ。 『BRAIN 一流の頭脳』(アンダース・ハンセン:著、御舩由美子:訳/サンマーク出版)は、そんな脳のメカニズムについて解説してくれている1冊だ。著者は、雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、講演などさまざまな場で活躍している、スウェーデン・ストックホルム出身の精神科医アンダース・ハンセン氏。さまざ
『「もんでヤセない身体はない」式 しぼり棒 1本で脂肪の攻め方10通り!』(本島彩帆里/KADOKAWA) 肌の露出が増え始める夏は、ダイエットに目覚める方も多くなる。巷では糖質制限ダイエットや置き換えダイエットなどといったさまざまなダイエット法が溢れているが、食事制限によるダイエットはメンタル的にも、健康面からみても厳しくなってしまうこともある。そんな方はぜひこの夏、揉んで痩せるダイエット法にチャレンジしてみてほしい。 『「もんでヤセない身体はない」式 しぼり棒 1本で脂肪の攻め方10通り!』(本島彩帆里/KADOKAWA)には元エステティシャンでダイエット美容家の本島氏が提唱するゴッドハンドセルフケア法が詰め込まれており、理想のスマートボディを作れる「しぼり棒」が付属している。本稿ではしぼり棒とは一体どんなものなのかを含め、斬新なダイエット法を詳しくご紹介していこう。 ■1本で10通り
2018年7月8日(日)放送のアニメ「ONE PIECE」第844話で、ナミの容赦ない行動が話題に。敵キャラに同情の声が続出していた。 これまでの話では、政略結婚を無理やりさせられそうになっているサンジを取り戻すべく、麦わらの一味が大奮闘。サンジはルフィの元へ帰還したが、ヴィンスモーク家を助けるため、サンジとプリンの結婚式を壊さねばならなくなった。強力なビッグ・マム海賊団に対抗するべく、ルフィはビッグ・マム暗殺を企むカポネ・ベッジと共闘することに。しかし暗殺は失敗し、ルフィとベッジたちはビッグ・マム海賊団からの逃走を試みる。 第844話「巨人の槍強襲! 空翔るビッグ・マム」では、ウエディングケーキを食べられなかったビッグ・マムが“食いわずらい”を起こして暴走。周りのものを破壊し始めたため、ビッグ・マム海賊団のペロスペローは「麦わらの一味がケーキを盗んだ」と咄嗟にウソをつく。するとビッグ・マ
今年5月16日に発表された第31回三島由紀夫賞受賞作の「無限の玄(むげんのげん)」と、いよいよ7月18日に選考会と発表を控えた第159回芥川龍之介賞の候補となっている「風下の朱(かざしものあか)」を収録した、期待のカップリング小説集が7月14日(土)に発売される! 本作で描かれるのは、死んでは蘇る父に戸惑う男たち、魂の健康を賭けて野球に挑む女たち――。若手作家の放つ注目の話題作から目が離せない! ■賞の選考委員は、この注目作をどう読んだ? ・三島由紀夫賞選考委員 辻原登氏の選評 私はこの若い作家に、前作の『リリース』の時から期待し、注目していた。『リリース』の中に次のような一文があったのを記憶している。「薪をくべる者の炎への期待」。薪をくべる者も炎に期待する者ももちろん作者だが、読者にはその炎で暖を取る喜びがある。 (中略) ありえない物語を語るための敷居は低く設定されていて、秀逸な細部と
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