第5回 食事の記憶、持ち主の記憶を宿す箸 デザイナー=益田 文和氏 “2本の棒”というシンプルな道具を “誰でも使える箸”に変える魔法のデザイン まず1本を、利き手の中指の先端関節と人さし指の付け根に渡してバランスさせた上で、親指と人さし指の先で挟んで支えるように持つ(鉛筆を持つ要領)。次にもう1本を薬指の先端関節と親指の付け根の内側に渡して親指の腹で押さえ、中指の先を軽く添える。この状態で、2本の箸(はし)はおよそ2cmの間隔を開けて平行になる。薬指で支えている方の箸は動かさずに、人さし指と中指、親指で持っている方の箸を動かして、2本の箸の先端を合わせるように調整する――。 これは箸の正しい持ち方だが、これを読んでいきなりその通りにやってみようと思っても、おそらくあまりに難解で、うまくいかないだろう。ましてや言われた通りに指と箸を動かして食材を挟み、口まで運ぶにはかなりの訓