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先週から発売になった「ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場」。もともとは著者のPhilip Delves Broughton から「草稿を読んで欲しいんだけど」と送られてきたワードファイルに感激し、すぐに日経BP社に「これは絶対に日本の読者にも読んでもらいたい!」とご紹介したのが経緯(そのご縁もあって、今回ははじめての監訳者としてお手伝いをすることに)。 これまでブログでも二回ほど紹介しています。はじめて読んだときの感想はこちら、米英で出版された直後の書評などを交えた紹介はこちら。それにしても、たまたま送られてきた一通のメールから、こうやって世の中に新しい作品として出されることになると、感慨深い限り。 今回、著者に「金融危機とMBA教育」というテーマでエッセイを書いてもらい、今朝から日経ビジネスオンラインに掲載されています(記事はこちら)。こちらも私が訳をやっているので、ぜひ読
ワインというのは難しい飲み物です。 まず他のお酒に比べて明らかに高額です。1本が1000円2000円ではあまり大したワインは飲めません。しかも基本的には1本を飲みきりです。日本酒であれば高品質なものでも数千円で手に入れられ、しかも数日にわたって味わえることを考えればコストパフォーマンスは良くありません。 次にヴィンテージやシャトーやドメーヌの名前、さらにブルゴーニュのように作り手などによって、商品が細分化されています。その上、保存状態によって品質が大きく変わります。ネット上のビンテージワインの安売りなどは、怖くて買うことができません。さらにワインの飲むときも抜栓の方法、温度、グラスなど様々な要因で味わいが変わります。 とにかくわかりにくく、高いというイメージです。 ボルドー・バブル崩壊はそんなワインの中でも最も投機性が高いと言われるフランスのボルドーのワインに絞りこんで、農産物としてのワイ
恒例の100冊リスト。 ただし、これまでの趣向を外した。「ベスト100ランキング」は楽しいが、変わりばえしない。毎年似たような「ベスト100」をヒネり出すのも飽きた。ホントのところ、「大学新入生」と銘打っているものの、わたしのためのブックリストなのだ。読んできたやつ、未読のやつ、読みたいやつを抽出したりふり返るためのきっかけなのだから。 だから、今回はランキングをしない。母体のリストは、「大学教師が新入生にオススメする本」なんだけれど、そこからの選出はわたしの手になるもの。今までのリスト作成の過程で知り合えたものや、「読まねばリスト」に追加したもの。積読山に刺さったまま、課題と化しているものを中心に100挙げた。 もちろんこの100冊を参考にしてもいいし、母体リストから自分専用の一覧を作ってもいい。母体のリストは三千弱になるが、元となったのは、以下のリスト。ブックガイドは多々あるが、「大学
「エコ・テロリズム」──まだなじみの薄い言葉かもしれないが、捕鯨船にガンガン体当たりを食らわせたり、乗船員に酪酸ぶっかけたりといった妨害破壊工作をしているような連中といえば「ああ、あいつらのことか」と得心がいくだろう。 つい先日(2009年2月6日)も、南極海で、日本の調査捕鯨船にシー・シェパードの抗議船が突っ込んだというニュースが流れた。 シー・シェパードはアメリカの環境保護団体。「海の自然を守るために警備している」と自称してはいるものの、威嚇発砲に捕鯨船撃沈、捕鯨施設破壊などなど数々の実績(?)を持つ、ほとんど海賊みたいな連中である。 「エコ・テロリズム」という呼び名はしたがって比喩や形容ではない。シー・シェパードは、FBIに認定された立派な(?)テロ組織なのだ。 目的のためには手段を選ばない、テロリスト認定された環境団体はほかにも存在する。「動物を守るためなら人命が犠牲になるのもやむ
・環境教育 善意の落とし穴 未来バンク理事長、ap bank監事の田中優氏が書いた環境教育論の小冊子。善意と無知が環境問題を間違った方向へ導こうとしていると指摘する。 ・東京の純粋な家庭ゴミは一般廃棄物のうち27分の1に過ぎない ・純粋な家庭からの二酸化炭素排出量は全体の13.5%に過ぎない ・家庭の電気消費量は全体の4分の1、問題の夏場ピーク時の1割に過ぎない ・日本の二酸化炭素の半分は200の事業所から排出されている いくら家庭で「みんなの心がけ」や「電気をたいせつに」したところで、環境問題は全然解決しないのである。 著者はこれまでの「身近なところから」式の環境教育に異論を唱える。 「環境教育が問題解決をめざすものであれば、全体像で、自分たちの位置をつかむことが重要だ。「やっぱりゴミは産業が出すものが圧倒的だから、こういう企業を変えていかなければなりませんね」という結論なら理解できるの
毒物指定、ただし社畜限定。 読書は毒書。とはいうものの、読者によって毒にもクスリにもなる。ローン背負って痛勤するわたしには、狂気たっぷりの毒書になった。やり直せない年齢になって、自分の人生が実はカラッポだったことを思い知らされて、嫌な気になるかもしれない。全てを捨て、人生をリセットしたくなるかもしれない。 かつては敏腕セールスマンだったが、今では落ち目の男が主人公。家のローン、保険、車の修理費、定職につかない息子、夢に破れ、すべてに行き詰まった男が選んだ道は――という話。だれもが自由に競争に参加できる一方で、競争に敗れたものはみじめな敗者の境涯に陥るアメリカ社会を容赦なく描き出している。 見どころは、このセールスマンの葛藤。 とても前向きで、強気で、ひたむきだ。人生の諸問題はプラス思考でなんとかなると押しまくる。今で言う「ポジティブシンキング」の成れの果てを突きつけられているようだ。自分に
年に一冊くらい、自分のビジネスを考えていく上でずっと役に立つ、バイブルになりそうな本に出会う。そういった本に出会うと、感想をブログに書き残すようにしている。その行為を通じて、何度も何度も読み返してその本からの学びを結晶化することができ、またその記事をあとからも何度も読み返すことで、そのエッセンスを自分のものとするからである。 このようにしたいと思う本に、久しぶりに出会った。リクルートの60万部フリーペーパー「R25」の創刊から編集長を4年間務めた藤井大輔氏による「R25のつくりかた」である。装丁もとってもお洒落でうらやましい。次は、こういう感じの新書を作ってみたい。 さて、私は感動する書物や音楽に出会うと、すぐに身の回りにいる人に薦めてしまう。そして、私のこの感動は、きっと仲間には伝わらないのだろうなと、これまでの経験から知っている。感動が大きければ大きいほど、がっかりする。 しかし、今日
・足もとの自然から始めよう 子供達の環境教育に投じられた一石。 「"環境保護的に正しい"とされるカリキュラムは、現在進行している悲惨な事態を目の当たりにすれば、子どもたちのなかに現状を変えていこうという意志が育つにちがいないという思い込みの下に進められている。しかし、実際にはこうした悲惨なイメージというものは、自己、そして時間と場所の感覚を形成する途上にある幼い子どもに対して、始末におえない、悪夢のような影響を与えている。」 著者は、熱帯雨林の破壊、オゾン層破壊、地球温暖化、絶滅危惧種の問題などの複雑な環境問題を、あまりに早い時期に子どもに教えようとするのは逆効果であるという。破壊された環境や殺された動物の映像を見せる前に、まず自然を好きになるような機会を用意すべきだと説く。 子どもの地理的、概念的な視野を超えた複雑さは、彼らに混乱を与えて自然に対する恐怖症を植え付けてしまったり、偽善的な
「不可能」とは自らの力で世界を切り拓く事を放棄した愚か者の言葉だ 「不可能」とは現状に甘んじるための言い訳に過ぎない 「不可能」とは事実ですらなく単なる先入観だ 「不可能」とは誰かに決め付けられる事ではない 「不可能」とは通過点だ 「不可能」とは可能性だ 「不可能」なんてありえない Impossible is Nothing. わたしを射抜いたadidasの言葉を思い出す。 SFのタネがぎっしり詰まった、けれども最先端の科学に裏付けられた科学読本。あるいは逆で、最先端科学でもって、SFのハイパーテクノロジーを検証してみせる。比較できない面白さに、かなりのボリュームにもかかわらず、イッキに読まされる。 本書を面白くしている視点は、「どこが不可能?」というところ。つまり、「それを不可能とみなしているのはどの技術上の問題なのか?」という課題に置き換えているのだ。「技術上の課題」にバラしてしまえば
大前研一氏と言えば、経済学から企業経営、経済政策から資産運用まで、現在社会の幅広いエリアで積極的に発言する「知の巨人」です。大量の書籍やWeb上でのコラムなどのアウトプットは本当に一人で書いているのか?と思ってしまうほどのボリュームですが、正直書籍に関しては買って読みたいという本が少ないのが現状でした。 その理由は2つあって、1つは自慢話が多いこと、そして、書籍が雑誌のような作りになっていて、価格に見合った価値があると思うことが少なかったからです。 しかし今回読んだ「知の衰退」からいかに脱出するか? は、自慢話はともかく(随分トーンダウンしています)、内容の濃さにおいては、「価格<価値」になっている本でした。赤線引きまくり、ページ折りまくりで読みましたが、とても通勤時間1日では読みこなせません。 今までの彼が行ってきた活動、提言を「知の衰退」という切り口で語りおろしています。ソフトな文体な
もちろん、わたしが死ぬ可能性は100パーセント。だけど、病死か交通事故死しか想定していなかった。 そんなことを気づかされ、失笑する。徴兵され、戦場でたおれることだってあるのか?いいや、いまや全体戦場の時代だから、前時代的な「戦死」はありえない。むしろ遠くからやってきたミサイルに蒸化される可能性の方が高い。 時代も距離も遠い場所にある戦場をもってくるために、面白い「語り」をやってのけている。家族の歴史をやるんだ。語り手の「いま」から外れて、おばあちゃんや叔母さんの話を始める。「かつて」と「いま」とを行ったり来たりするリズムを、「波」に喩える評があるが、まさにそんな感覚。 この、家族を次々と紹介していき、家族史をさかのぼるところなんて、アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」を思い出す。アーヴィングにまけずおとらず、魅力的なエピソードが満載で、読み手はくすくす、にやり、爆笑したり、大変いそ
この本、「出社が楽しい経済学(吉本佳生, NHK「出社が楽しい経済学」制作班)」(参照)なんだけど、この手の経済学をわかりやすく説明しますよ本の類型としても、よく出来ているんじゃないかと思う。 ただ印象だけど、たぶん執筆者や編集側が想定しているよりこの本の内容はレベルが高いので、昨今の乱造的なビジネス向けの新書より読みづらいかもしれないなという感じもする。もう一ついうと、コンセプトの「出社が楽しい」を意識して、現実に応用できそうなノウハウにフォーカスしているので、経済学的な思考の応用にはなるのだけど、発想のコアの部分は逆に理解しづらいかもしれない。このあたりは微妙。 で、エントリ起こしたのは書評的な話というよりも、この本、現在放送中の同番組のテキスト的な意味合いがあり、その番組はどうよ、なのだが、これが、よいです。ワタシ的にはかなりグーな番組。そして、いよいよ次回、1月24日(土曜日)23
2009年01月21日12:15 カテゴリ書評/画評/品評Math 不可能性・不確定性・不完全性 - 書評 - 理性の限界 なんとも素晴らしい一冊。 理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性 高橋昌一郎 著者による「ゲーデルの哲学」も素晴らしかったけど、より「一般人も知っておくべき「不○×性」が、新書一冊に見事に収まっている。 本書「理性の限界」は、まさにタイトルどおり、理性が理性であるがゆえに生じる限界--実は矛盾を、理性的に留まらず感性的にも、理系にとどまらず文系にも届く言葉でまとめた一冊。 目次 - 理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性 高橋昌一郎 講談社より 序章 理性の限界とは何か 第1章 選択の限界 投票のパラドックス / アロウの不可能性定理 囚人のジレンマ / 合理的選択の限界と可能性 第2章 科学の限界 科学とは何か / ハイゼンベルクの不確定性原理 EPRパラドック
オバマ大統領、 これから就任でしたっけ。 さて、 幻冬舎新書から出版された「オバマのアメリカ」(渡辺将人著)は、大統領選という一大イベントと、オバマ当選という歴史的な事実の分析を通じて、現代アメリカを読み解く快著である。何ともタイムリーな本なのですっかりベストセラーになってるかと思いきや、まだ皆さんに発見されていないようなので、ここでご紹介を。 著者は1975年生まれなので自分と同年代だが、民主党の大統領選挙事務所で働いていたこともあり、驚くばかりの現場感を持って、今回の大統領選の舞台裏も解説している。 テレビで映る党大会の様子を見て、いつも驚きあきれるのがアメリカ人のお祭り好きな性質。候補者が出てくると、ずっとヒューヒュー歓声が飛ぶし、スピーチの途中でも、ちょっといいことを言うと、拍手と大歓声が止まらない。まるで大リーグの試合でも見ているようだ。日本の選挙イベントでここまで盛り上がること
Real Educationの著者は、以前The Bell Curveという本を書いており、この本、ものすごく論議を読んだ本なのだが、決して「トンデモ本」ではない。ベースとなっているのはまともな科学的調査。もちろん、読んでみて「これは違うだろう」だと判断するのは自由だが、他人が言ったこと(たとえそれがStephen Jay Gouldであっても)を鵜呑みにして、読みもせずに「トンデモだ」というのは勿体ない本じゃないかと思います。Bell CurveもReal Educationも決して読み物として楽しくはないのが痛いところなのだが。 論議を呼んだ経緯は英語のWikipediaに詳しい。最初の方にcontroversialと書いてあるので「批判された」本だと勘違いする人もいるかもしれないが、これ「議論を呼んだ」という意味の単語ですのでよろしく。 (付記:グールドの「人間の測りまちがい」という
昨日のエントリーに 「学力とマネジメント能力の相関もデータがあるのか」 という質問があって、答えると長いので別エントリーにします。というか、ひたすら、そういう「きっと出るであろう反論」を予想してそれを先回りして答えまくる、というのがこの本なので、疑わしーと思う人は是非オリジナルを読んでね。 まず人間の能力を7つに分解(これは、1983年にHoward Gardnerが編み出した分類を使用。) 身体運動知能 Bodily-kinesthetic intelligence 音楽知能 Musical intelligence 対人知能 Interpersonal intelligence 内知能 Intrapersonal intelligence 空間知能 Spatial intelligence 論理数学知能 Logical-mathematical intelligence 言語知能 Li
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