欧米やオーストラリアにおけるアーカイブズ利用者の多数を占めるのは自分の先祖のことについて調べる一般の市民です。このような家系調査の存在が、アーカイブズの存在を社会的に支えているとも言えます。この点に着目して、本論文では、「日本のアーカイブズで欧米のような家系調査をすることは可能か。またアーカイブズはそれを奨励すべきか」(90ページ)という問いを立てて検討しています。 この問いに対する著者の結論は、「アーカイブズの本質が十分理解されているとは言いがたい現在の日本では、無闇に家系調査を奨励することは危険だが、同時に家系調査を契機とする一般利用が増えることによって、アーカイブズに好ましい刺激が与えられる可能性があることも理解すべき」(96ページ)というものです。 情報公開法や個人情報保護法がアーカイブズの公開に与えた影響についても言及されています。 何を公開し、何を非公開とするのかは、文化によっ
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