ますます大きな規模のデジタルデータ公開が続き、古典研究を含むさまざまな分野においてその基盤がすこしずつ整い、オリジナルデータを整理したり、異なる次元の情報を付け加えたりするような課題は、つぎからつぎへと具体的になってきた。デジタル環境におけるつぎなる大きなうねりを迎えようとして、基本となる方法論を見定めることが要求されてくる。その一例として、今年三月から公開した「漢籍リポジトリ」の紹介文は、たいへん興味深い。 中国の古典籍を対象とするこの大きなリソースは、四庫全書のような底本を頼りにしつつ、デジタル環境でのテキストの未来形を探ろうとしている。そこで、いわゆる古典のありかたをめぐり、文献学的に理路整然と述べている。そこで使われている中心的なコンセプトは、つぎの四つのレベルに別れるものだ。いわく、著作、表現形、体現形、個別資料。かつて軍記ものをテーマに過ごした学生時代のことを思い出しながら、「