今回お話を伺った上野動物園で飼育員をされている細田孝久さんは、「動物を飼うことは文化である」とおっしゃっていた。動物園という存在に対して批判も含めて文化であるという言葉は、とても深いものだと思う。 動物は自分の思い通りには動いてくれない。動物を飼うことは、まさに自然と向き合う職業である。 脳科学や認知科学など複雑系のコミュニティーではよく話をするのだが、自然と人工の違いについて、自然の定義とは「思うままにならないもの」である。そういう意味で言うと、自分自身の中にも自然はある。 「裸のサル」の著者であるデズモンド・モリスが、人間は飼育下の動物に似ているという議論をしている。人間は文明という檻の中で飼われていて、そこから逃れることはできない。文明という保護地帯、あるいは会社、組織という保護地帯もある。よく社畜などと自分を卑下して言う人もいるけれど、いずれにせよ飼育下にあるというのは事実である。