忍野川釣行 （北村守通）: The Contemporary Poetry Magazine II

忍野川釣行 バイカモと ビニール袋が 揺れる 揺れる 踊る バイカモと ビニール袋と 黒い影が 揺れる 揺れる 踊る バイカモと ビニール袋と 黒い影と フライラインが 揺れる 揺れる 踊る 黒い影が ひるがえり 白銀に 変化する フライラインが 水しぶきを上げ ゆるやかな世界を 一瞬だけ 鋭く切り裂き 降り注ぐ光線を 分断させ 空を 貫通し 透明と 透明とが 擦れあい その摩擦の音が 響き渡る しかし 全てはやはり 一瞬のことであって すぐにもとの調和のとれた世界に引き戻される ちょうど 湖に流れ込む 小さな川とも呼べない代物の 流れを変えてやろうとして その河口を 深く 深く 掘ってみても ものの数分としないうちに 積み重ねてきた流れによって 削り取られ もとの形に戻されてしまうように 力なき フライラインが フックを失った フライラインが 揺れる 揺れる 踊る バイカモと ビニール袋

[ishikawa-kz]

北村守通さんの詩