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『夢の花綵』「その夢、咲き初めしころ」喪服 - 夢のように、おりてくるもの(磯崎愛) - カクヨム
制服をきてくるべきだった。あたしは一瞬だけ後悔した。みな制服をきていた。高校のクラスメイト、そし... 制服をきてくるべきだった。あたしは一瞬だけ後悔した。みな制服をきていた。高校のクラスメイト、そしてクラス委員同士、そのご両親の葬儀でのこと。 あたしは本来ならまとめ役をしないとならない立場だったけどその日はお稽古の発表会があった。それで仕方なく従兄に車で送ってもらい母のいうとおり喪服をきてお通夜にでた。 ひとの視線には慣れている。あたしはこの土地の全域をおさめていた一族の末裔だ。家屋は文化財に指定され近くの社は我が家の先祖が奉献し裏山にある山城もかつて豪族であった証のひとつだ。今でさえ父は議員をしているし、あたしの名前を知らなくともあたしの名字はみな、知っている。 けれど彼はあたしを見なかった。一揖してそれきり。 無理もない。 あたしは、あたしだけは、彼の秘密を知っていた。 事故のあった日、年上の美女と逢引きしていたことを。それと同じく、あたしも年上の男とホテル街にいたのだけれど。それはま
2023/10/31 リンク