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小説「高天原勃津矢(2006年)」|小鳥猊下
01.慟哭ゲー 「しかしわたしを信ずるこの小さな者を一人でも罪にいざなう者は、大きな挽臼を頚にか... 01.慟哭ゲー 「しかしわたしを信ずるこの小さな者を一人でも罪にいざなう者は、大きな挽臼を頚にかけられて海に投げ込まれた方が、はるかにその人の仕合わせである」(マルコ 9:42) この物語に登場する人物も、”エロゲー”そのものも、言うまでもなくフィクションである。 しかしながら、広くおたく文化の成立に影響した諸事情を考慮に入れるなら、この物語の主人公のような人物がわが社会に存在することはひとつも不思議でないし、むしろ当然なくらいである。私はつい最近の時代に特徴的であったタイプのひとつを、ふつうよりは判然とした形で、公衆の面前に引き出してみたかった。つまりこれは、いまなおその余命を保っている一世代の代表者なのである。”慟哭ゲー”と題されたこの断章で、この人物は自己紹介をかねて自身の”泣きゲー”への見解を披瀝するとともに、かかる人物がわれわれの前に現れた、いや、現れざるを得なかった理由を明らか