待っていることも、忘れていたけど｜角尾 舞 | Mai Tsunoo

ことばが帰ってきた。 ここ数ヶ月、不思議なほどに文章を書く気が起きなかった。直近にいたっては、Twitterの140文字すら考えるのが億劫だった。 仕事の文章もなかなか手がつけられなくて、今も待ってもらっている原稿が何本もあるのだけれど、どうやら仕事のプレッシャーが原因だったらしい。 抱えていた展示がようやくはじまって３日経った今日、どこからともなく体のなかにことばが帰ってきた。おかえりなさい。 突然だけれど、いまこの文章はイタリアのヴェネツィアで書いている。ヴェネツィア・ビエンナーレの会場をふらふらと歩いていたら、なんだかふと、周りの状況が言語化された。それはことばのスケッチのようなものだった。 「無垢材のパネルに並ぶ、黒人女性を写したモノクロプリント。巨大なドールハウス。韓国のパビリオンから出てきた、白黒のネコ。長いしっぽ」。 そういえばいつもずっとそうだったのだけれど、ここ２ヶ月ほど

[mayumiura]

“かといって、職人に徹せるような特技や技術もないから、しぶしぶ自分自身を表に出す必要も感じ、自己矛盾と葛藤にさいなまれる。なんだか、いつもこんなこと書いている気がするな。”