あんなに澄んだ小説は、あとにも先にも出会ったことがない。 出てくる人みんな、一生懸命生きていて、こちらまで照らされる。 「会社の若い子が読んでいたから」と、若い頃に吉本隆明さんの本を読んでいた父が買ってきてくれたのが「キッチン」でした。 それまで児童文学や名作シリーズなどを読んでいた中学生の私にとって、「キッチン」は衝撃の内容の初めての大人の小説でした。 その後何度も引っ越しをするたびに、父に買ってもらった「キッチン」も一緒についてきて、何度も何度も読み返してきました。 結婚して3児の母となり、40代になった今読み返しても、毎回初めて読むような新たな発見があります。 ばななさんの本はほかにも何冊も読んで、本棚から何度も取り出して読んだ本がほかにもあるのですが、「キッチン」は私にとって特別な作品です。 この本と出会えたことに、ばななさんに感謝しています。 みき 大人になって、はじめて一人暮ら