東日本大震災五周年を記念して再掲載:いとうせいこう『想像ラジオ』(河出文庫)と柄谷行人『遊動論―柳田国男』(文春文庫)をめぐって ■新しい柳田論「遊動論」はなぜ書かれたか いとう 柄谷さんの「遊動論――山人と柳田国男」(文學界二〇一三年十月号〜十二月号。二〇一四年一月文春新書より刊行予定)をいち早く読ませていただきました。『トランスクリティーク』『世界史の構造』『哲学の起源』のあと柄谷さんが何をやるのかと思ったら柳田国男だったことに驚いたし、前作までで獲得された視座に立って柳田を読むというのが非常に面白かった。と同時に、現在の日本の政治的状況を考えると、すごくアクチュアリティがある論だと思いました。戦争の問題ですよね、これは。 柄谷 そうですね。 いとう 戦争が近づく中で「こども風土記」を書き、空襲下で「先祖の話」を書いた柳田国男に柄谷さんが焦点を当てたというのは、柄谷さんの著作のタイトル